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CIA実務者インタビュー

【vol.7】50代からの専門性掛け算で視界が開ける――
3つの国際資格(CIA/CFE/CISA)と「知行合一」で手に入れた、経営と現場を動かす力

小笠原 高重 さん

小笠原 高重 さん
オムロン株式会社 グローバル理財本部
内部統制推進室

1. ジェネラリスト歴約30年の危機感――40代後半で決意した「専門性の掛け算」

私のキャリアの大きな転機は2016年、40代後半で初めて内部監査部門へ異動となったことでした。それまでは建設現場の事務管理、海外拠点の管理業務、本社人事・総務、秘書部門など、約30年間にわたり幅広い業務を経験してきた「スーパージェネラリスト」でした。異動当初こそ戸惑いもありましたが、グループ全体を俯瞰し経営者に直接報告する内部監査の重要性を実感するにつれ、意識が変わっていきました。

当時、50代を迎えるにあたり「自分は何の専門家なのか」を明確に説明しにくいことに強い危機感や課題意識がありました。過去の経験だけに頼るのではなく、体系的な知識を身につけて自分の判断を支える土台を作り、専門性を開拓したいと考えたのです。

一般的には、50代での監査部門配属をキャリアの落ち着き所と捉える見方もありますが、私にはそのつもりはありませんでした。自分自身の可能性を広げるべく、まずは簿記2級の学習からスタート。当時の上司の勧めもあり、CIAの学習へと踏み出しました。

2. CIA・CFE・CISAの3連鎖――
「土台・対話力・IT」がつながり、見えた世界が変わった

CIA取得後、私はさらにCFE、CISAの取得へと挑戦を重ねていきました。この3つの資格は、私の実務において密接に関与し合っています。

まずCIAで監査人としての幅広く高度な知識やスキルの「土台」ができました。次に進んだCFEでは、不正対策の知識に加え、現場から生の声を引き出す「ヒアリングスキル」が格段に高まりました。そして文系出身の私にとってハードルの高かったCISAですが、取得したことで視界が一気に良好になりました。デジタルエビデンスの分析やITガバナンスの理解なしに、現代の監査や内部統制は進められないからです。

この3つの知識が組み合わさったことで、「見えるリスク」「任される仕事」「対話する相手」が変わりました。CISA取得後は自らアクセスコントロール監査やIT統制のJ-SOX評価を担当するようになり、対話する相手も従来の部課長クラスから取締役や監査役といった経営層・マネジメント層へと大きく広がっていきました。

3. 資格取得直後の罠――
理論を振りかざして落ちた「机上の空論」という失敗

資格を取得したからといって、すべてが順調に進んだわけではありません。前職時代、3資格を取得した直後に大きな失敗を経験しました。

知識が豊富になり「スーパーサイヤ人」のような状態になった私は、リスク管理の手法を構築するタスクフォースで、学んだ理論や知識をギュッと詰め込んだ提案を行ったのです。ところが周囲からは「言っている意味がわからない」「実務的ではない」と拒絶され、まったく言葉が通じませんでした。完全に机上の空論になっており、大きな反省となりました。

この失敗から学んだのは、専門用語をそのまま使うのではなく、相手の立場に合わせた言葉に変換することの大切さです。「何のリスクを防ぐためにこの仕組みが必要なのか」を現場の業務に寄り添って噛み砕き、ビジネスの効率とガバナンスのバランスを取った施策を提案する。現職へ転職して4年目となりますが、事業部門の方々と対話する際は、常にこの「相手に通じる言葉で伝える」ことを徹底しています。

4. 知行合一(ちこうごういつ)――
資格で得た知識と経験・最新領域(AI)の掛け算

私が仕事とキャリアにおいて最も大切にしているのが、幕末の吉田松陰も教えに用いた「知行合一(知識と行動は一致しなければならない)」という言葉です。資格は取って終わりではありません。高い「志」を頂き、得た知識を実務の中で「行動」に移し、現場や経営の課題解決という結果に結びつけて初めて価値が生まれます。

現在、私は内部統制推進室の責任者として、国内外の基幹システム更新に伴う内部統制の整備を進めています。社内でも伝えましたが、ガバナンスと内部統制の関係を車の運転に例えるなら、ガバナンスは運転する「ドライバー(経営者)」、内部統制はブレーキやナビゲーションなど車に備わる「安全装置」です。ドライバーが安全に、かつ早く目的地に到達するためには、安全装置が十分に機能していなければなりません。言い換えれば、内部統制が機能することで、経営者は安心して事業成長というアクセルを踏むことができます。正解が1つではないからこそ、現場と経営の間に立ってより良い仕組みを一緒につくっていくことに大きな面白さを感じています。

さらなる成長に向けて、CIA・CFE・CISAで培った知識に、約30年の実務経験やAIなどの最新領域を掛け合わせる挑戦を続けています。現在はAAIA(Advanced in AI Audit)の取得やAIガバナンスへの実践的理解を目指すとともに、世界中の仲間と直接議論し、新たな価値を創出できる人材を目指して英語力の向上にも取り組んでいます。専門性と最新スキルを磨き続けながら、グローバルガバナンスの構築や後進の育成を通じて、組織と社会に貢献していきたいと考えています。

編集後記

「50代からの専門性の掛け算」と「知行合一」を体現される小笠原さんのお話は、キャリアに悩む多くの方へ勇気を与えるものでした。
3つの資格の理論を「伝わる言葉」へ昇華させ、内部統制を「経営者が安心してアクセルを踏むための安全装置」として機能させる実践力、さらにAIなど最新領域へ学びを広げる探求心に、深く感銘を受けました。