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Withコロナ時代において、ビジネスの世界は大きな変化を遂げようとしています。そんな中、50・60代から自分の価値を高めていく上で、CIA(公認内部監査人)は大きな武器になるかもしれません。今回は、実際に50・60代にCIAを取得された佐田俊樹さんと松本健宏さんに、実務やキャリア形成においてCIAがどう生きるのか本音で語っていただきました。
*2020年12月実施のイベントをまとめています。情報は開催時のものです。
―経歴とCIAを目指したきっかけを教えてください。
佐田俊樹さん(以下佐田) 私は、新卒からずっと大手証券会社グループに在籍していました。2005年に初めて上場企業の監査役に就任し、そこで監査の能力を向上させたいと考え、2007年にCIAを取得しました。当時は57歳でした。それ以降、監査役を専業としていますが、60歳の定年退職を機にベンチャー業界に転じました。この15年間で合計10社の監査役を務めさせていただき、現在は6社の監査役を兼任しています。
私がCIAを目指した当時は、日本ではCIAはほとんど知られておらず、周りに取得者は誰もいませんでした。しかし、監査の世界基準であるCIAは日本においても広がっていくという直感のようなものがあり、勇気を持って挑戦しました。
松本健宏さん(以下松本) 私は大学を卒業してメガバンクに就職しましたが、2018年に監査部に配属されたのをきっかけに、CIAを取得しました。その後、2019年7月に製造業に転職し、10月に監査室に配属されました。12月からは監査室長を務めております。銀行には33年間在籍していましたが、そのうち17年間は海外勤務でした。海外では、監査人が高給で引き抜かれる、あるいは、監査人をなかなか雇えないといったことを目にしており、監査人に対するニーズの高まりを感じていました。
そんな中、日本に戻ってきて監査部に配属されたタイミングで、自分の今後について改めて考え、「監査ができるというのは一つの売りになる」と思ったわけです。そこで、監査の能力を身に付けると同時に、それを社外にも見える化しようということで、CIAの取得を決断しました。
―CIAで身に付けた知識やスキルは、どのような形で実務に生きていますか?
佐田 私は監査役でしたので、CIAで学ぶことはまさに実務そのものでした。そのため、勉強したことを実務の中で適用し、一つずつ確認しながら学習を進めていました。今でもCIAで毎日勉強したことを、実務でそのまま使っているという形です。また、監査役は監査法人や内部監査人とコミュニケーションを取ることになりますが、その際、専門的な内容を共通言語で話せるようになるのも大きいと思います。コミュニケーションがスムーズになることは、業務の質向上にもつながっているでしょう。
ここで少し補足しておきたいのは、監査役や内部監査人でなくても、CIAで学ぶ知識には価値があるということです。なぜなら、今までと違った会社という組織の見方ができるようになるからです。例えば、会社のどこで不正が起こりやすいか、リスクがあるかということは、CIAで勉強する基本です。これは会社の経営や管理においても非常に重要なところなので、経営職や管理職になる人にとっても大いに役立つというわけです。
松本 CIAで習得した知識やスキルという面では、まさに佐田さんがおっしゃった通りだと思います。私自身、今でもアビタスの教科書を手元に置いており、何かあったときにそれを見直して、自分の考え方を整理することがあります。私の場合、金融機関から製造業へ転職しましたが、両者では業務のプロセスが全く異なっていました。例えば在庫棚卸しのプロセスを評価するといったことは、製造業に来てから初めて経験したものでした。ですが、CIAの学習を通じて「最低限ここまではやるべき」という基準が分かっていたので、初めてのプロセスでも問題なく監査ができました。このように、業界を超えて普遍的に通用するスキルや知識が身に付くのは、CIAの大きなメリットだと感じています。
―CIAは、キャリアアップする上でプラスになるでしょうか?
佐田 CIAを取得していると、内部からも外部からも信用や評価が自ずと上がります。また、CIAはグローバルな資格なので、例えば海外法人の現地スタッフと会議を行う場合でも、名刺交換や自己紹介をしたときの信用度が大きく変わるでしょう。転職においては、CIAの知識が生きる場合には、当然有利に働くはずです。監査関係はもちろんのこと、広く管理部門において、CIAを取得しているかどうかで採用する側の印象は大きく違ってくると思います。それに加えて、仕事がある傍らCIAを取得したことは、自分のキャリアに対して真剣な人だという証左にもなります。これは私が採用する側であればかなり重きを置く部分でもあり、採用において重要な要素だと考えています。
松本 私の転職に関しては、実はCIAの取得前に決まっていたので、それが直接関係したわけではありませんでした。とはいえ、CIAを取得しているかどうかで、転職時や転職後に最初に会う人が持つ第一印象は、やはり違ってくると思います。また、会社が監査人を採る際に、CIAを取得しているのは非常に分かりやすい要素だと思います。採用担当者が上司を説得しやすいということもあるでしょう。今後、監査人に対するニーズが高まる中で、転職において役立つことは多いのではないでしょうか。
―佐田さんはCIA以外にCFE(公認不正検査士)、USCPA(米国公認会計士)も取得していますが、どのような違いがありますか?
佐田 CIAは、会社の不祥事を防ぐような内部統制を構築していく、あるいは、構築できているかを監査するのが仕事です。一方でCFEは、大きな問題や不祥事、不正が起きてしまったときに対応するのが仕事です。多くの場合、これはワンセットです。CIAをやってからCFEに行くのは、ごく自然な流れと言えるでしょう。
USCPAについては、監査をやる上で会計監査も深く理解しておきたいと思い取得しました。USCPAを最初から学習する場合は時間もかかって大変ですが、CIAをやった後だと随分違うと感じました。例えば、監査に関する科目は両方にあります。CIAは監査そのものなので、その部分に関してはCIA試験の方が広く深いと言えるかもしれません。もし将来USCPAを取得するとなった場合には、CIAの知識が生きるところが多くあると思います。
―新型コロナウイルス感染症は内部監査活動にも影響していると思いますが、これからどのような変化があると考えていますか?
佐田 監査では、オンライン化とデジタル化という2つの変化が既に起こっていましたが、コロナ禍によってこれが大きく加速すると考えています。例えば、紙の会計帳簿を会社に行ってひっくり返すという、従来的な時代ではもうないわけです。
情報はどんどんデジタル化され、監査する側もそれにオンラインでアクセスするようになっていくでしょう。それもグローバルに、です。また、デジタル化によって、コンピューターを使った大掛かりな監査も可能になっていきます。監査する側としては、こういったテクノロジーを使いこなす能力も必要とされるようになるのではないでしょうか。
松本 まず私が意識しているのは、テレワークが主体になったことによって、監査される側の業務プロセスや内部統制が変わるという点です。そのため、どういったリスクがあるかということを、もう一度新しく業務部門と一緒に洗い出す必要があると考えています。次に、実際に会社に行って監査をするということができなくなる中で、リモート監査をどうやって効果的・効率的に進めることができるかということです。例えば目視での確認などができない中で、どうやってそれを担保するのかといったことなど、やり方を考えていく必要があると思います。最後に、こういった業務の変化の中で、BCP(事業継続計画)を見直していく必要があります。それが実際にできているかどうかということを、タイムリーに監査していくことも非常に重要でしょう。
―最後に、これからCIAを目指す皆さんにメッセージをお願いします。
佐田 CIA試験は、IIA(内部監査人協会)が優秀なCIAを育成して、CIAの数を世界中に増やす目的で実施している試験です。そのため、プログラムを見れば分かると思いますが、本当の意味で勉強させるプログラムになっています。目的はCIAを増やすことなので、真面目に勉強すれば間違いなく合格できる試験とも言えます。ふるい分けをして落とすための試験ではなく、合格させるために勉強させる試験なので、ぜひ皆さんもチャレンジしていただけたらと思います。
松本 不祥事を防止することの重要性が従来よりも高まる中、監査人のニーズはだんだんと高まっています。そのため、CIAの資格を取得するというのは、ミドル・シニア世代にとって、自分の今後の可能性を広げるという意味で価値があると考えています。また、今後AIにさまざまな仕事が取って代わられると言われています。では、AIができないことは何かというと、今あることに問いを立てる能力です。監査という仕事は、まさにこれに合致すると思っています。
こういったことから、監査は将来のニーズに合った職種であり、CIAはモチベーションを持って目指せる資格だと思います。皆さんそれぞれのやり方があると思いますが、それぞれのやり方でCIAに合格されることを祈っております。
佐田 俊樹
株式会社 グッドパッチ 監査役
(さだ・としき)大手証券会社において監査役に就任。定年退職後はベンチャー企業の監査役を歴任。監査役の経験は計10社。現在は6社の社外監査役を兼務。CIA(公認内部監査人)、CFE(公認不正検査士)、USCPA(米国公認会計士)。
松本 健宏
製造業 内部監査室長
(まつもと・たけひろ )メガバンクにおいて17年の海外支店勤務を経験。2018年日本に帰国後は、監査部にて内部監査業務に従事。2019年に製造業に転職し、監査室にて内部監査業務に従事。同年監査室長に就任。公認内部監査人。
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