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  • 2024/11/07公開

内部監査の実施はうざいと思われている?現役CIAが解説

内部監査の実施はうざいと思われている?現役CIAが解説

監査対象部門による内部監査のイメージとは、どのようなものなのでしょうか。

正直なところ、ポジティブなイメージより、「怖い」や「不安」といったネガティブなイメージを思い浮かぶ方が多いかと思います。特に、Googleで内部監査と入力すると、関連キーワードに「うざい」と表示されることが多いため、うざいというイメージは根強くあると考えられます。

内部監査がうざいと思われている状況というのは、監査人からすれば非常にやりづらい状況かと思います。ですが、うざいというイメージは何だか漠然としており、内部監査部門からしてみると、具体的に何が課題で、どのように解決するべきか分かりません。

そこで、本記事では、この漠然としたうざいというイメージを掘り下げた上で、なぜ内部監査人はうざいというネガティブなイメージに負けてはいけないのかを解説し、具体的にどのような行動を取るべきなのかについても解説します。

どのように内部監査を実施すべきか悩まれている方や新人内部監査人の方などは、是非と参考にしてください。

目次
「うざい」という言葉に含まれる意味
なぜ内部監査人は「うざい」という感情に負けてはいけないのか
「うざい」という感情に負けないためには
信頼関係を構築できる誠実な内部監査人を目指そう

「うざい」という言葉に含まれる意味

実際に「うざい」という言葉を辞書で調べてみると、「あれこれとうるさい。わずらわしい。」という2つの意味が出てきます。そのため、今回は「うるさい」と「わずらわしい」という2つの観点から「うざい」という言葉について解釈します。

「うるさい」と「わずらわしい」の意味と内部監査の現場の状況を考慮した上でそれぞれ解釈してみると、以下のように読み取れます。

「うるさい」については、監査対象部門からすると、自部門が行っている業務について、聞いてほしくないことや余計だと感じることを言われてしまった時にうるさいと感じてしまうことが考えられます。特に、監査対象部門の責任者が内部監査人から痛いところを突かれるような指摘を受けたり、そもそも監査対象部門全体で監査に対する意識が低ければ、うるさいと感じてしまう可能性は高くなるでしょう。また、内部監査部門が実際に監査対象部門の業務を実施したことがあるわけではないという事実も、うるさいという感情を抱かせる拍車をかけていると考えられます。

「わずらわしい」については、指摘項目に対する改善活動を面倒だと感じていることが考えられます。監査対象部門からすれば、既存の業務に加えて、指摘項目に対する改善活動を実施することになりますので、必然的に業務量が増えてしまいます。とすると、監査対象部門は業務量を増やすことを避けるために、指摘になる要因を隠蔽したり、内部監査部門に高圧的な態度を示して、強引にでも指摘にならないよう働きかける可能性があります。

以上の点を考慮した上で、うるさいと思わせる要因とわずらわしいと感じさせる要因をできるだけ除去するための取り組みを実施する必要があります。

まずは無料の説明会にご参加ください。

なぜ内部監査人は「うざい」という感情に負けてはいけないのか

当然のことですが、うるさいと思われたり、わずらわしいと思われたとしても、内部監査部門に属する内部監査人として、業務に悪影響を及ぼすようなことをしてはならないし、あってはなりません。

常識的に考えたらわかる話かもしれませんが、内部監査人たるもの、明確にそうなってはならない根拠が存在します。その根拠に則れば、うざいという感情に負けてしまうことで、内部監査人として許さない過ちを犯してしまうことにつながりかねないことがご理解頂けるかと思います。

まずは、そもそもなぜ内部監査人として許されないことになるのか解説します。

「内部監査人」として許されない理由

内部監査人として、うざいという感情に負けてはいけない理由は、うざいという感情に負けてしまうことによる行動は、専門職的実施の国際フレームワーク(IPPF)に合致しない行動となりうる可能性が高くなるからです。

具体的に解説する前に、ひょっとしたらここまでお読み頂いた読者の中には、「内部監査に限らず、社会人としてうざいという感情に負けないなんて当たり前だ!」と感じた方がいらっしゃるかもしれません。その感想は全く間違っていませんし、仰る通りです。また、恐らくそのように考えることができる方はうざいという感情に負けることはまずないと想像できます。

一方で、仮に職場環境や社内の雰囲気などが劣悪であれば、そのような常識が通用しない可能性も想定できます。内部監査では、劣悪だからといってアシュアランス業務やコンサルティング業務などを適切に行わないというのは特に許されませんが、だからといって感情論や根性論などで乗り切るべきというのも、このご時世、難しくなってきているかと思います。

本当に手詰まりの状態であれば、然るべき窓口に相談するなどの方法もありますが、最初のステップとしては、職場環境や社内の雰囲気が劣悪なら、それを改善できるよう監査対象部門にアプローチし、改善を促すことができる内部監査人を目指して頂きたいと考えています。

その点も含めて、今回は、専門職的実施の国際フレームワーク(IPPF)に記載の「内部監査の使命」と必須のガイダンスである「基本原則」「定義」「倫理綱要」と実施ガイダンスの実施ガイド「専門職としての正当な注意」と照らし合わせながら解説します。

参照:IIA国際フレームワーク

内部監査の使命

まず最初に「内部監査の使命」です。

内部監査の使命は「リスク・ベースで客観的な、アシュアランス、助言および洞察を提供することにより、組織体の価値を高め、保全すること」とあります。うざいという感情に負けてしまうことで、客観的な助言や洞察を提供することが極めて困難となり、組織体の価値を高めることができないことが想定できます。

参照:Mission of Internal Audit

内部監査の専門職的実施の基本原則

次は「内部監査の専門職的実施の基本原則」です。

内部監査の専門職的実施の基本原則の中には、様々な基本原則が記載されていますが、その中でも特に「誠実性を実践により示すこと」「専門的能力と専門職としての正当な注意を実践により示すこと」「客観的で、不当な影響を受けないこと」「洞察力に優れ、先見性があり、未来志向であること」については、うざいという感情に負けてしまうことで、様々な悪影響が生じることが想定できます。

参照:Core Principles of Internal Audit

内部監査の定義

次は「内部監査の定義」です。

内部監査の定義は「内部監査は、組織体の運営に関し価値を付加し、また改善するために行われる、独立にして、客観的なアシュアランスおよびコンサルティング活動である。内部監査は、組織体の目標の達成に役立つことにある。このためにリスク・マネジメント、コントロールおよびガバナンスの各プロセスの有効性の評価、改善を、内部監査の専門職として規律ある姿勢で体系的な手法をもって行う。」です。

最初の文章については内部監査の使命と同じ解釈となりますので割愛しますが、最後の文章にある「規律ある姿勢で体系的な手法をもって行う」という点については、うざいという感情に負けてしまうことで、規律ある姿勢が崩れ、体系的な手法で内部監査を実施することが困難になることが想定できます。このような状態でアシュアランスおよびコンサルティング業務を行ったところで、組織体の価値を本当の意味で付加できるはずがありません。

参照:Definition of Internal Auditing

倫理綱要

次は、「倫理綱要」です。

倫理綱要は、内部監査人としてあるべき倫理的な素養について直接的に言及していますので、今回の話に限らず、内部監査人のあるべき姿について考察する際は是非とも参考にして頂きたいです。

倫理綱要の原則は「誠実性」「客観性」「秘密の保持」「専門的能力」の4つとなりますが、特に「誠実性」と「客観性」については、うざいという感情に負けてしまうことで、原則と大きく逸脱した行動になってしまうことが想定できます。

参照:倫理綱要

専門職としての正当な注意

最後は、「専門職としての正当な注意」です。

実施ガイドの「専門職としての正当な注意」では、「内部監査人は自らの責任を果たすために必要な「知識・技能・その他の能力」を備えていなければならない。さらに内部監査部門は部門の責任を果たすために必要な「知識・技能・その他の能力」を、部門総体として備えているかまたは備えるようにしなければならない。」と記載されています。

ここでポイントとなるのは、うざいという感情に負けてしまうことで、仮に内部監査の知識・技能・その他の能力を持っていたとしても、適切に実行することができず、結果として、知識・技能・その他の能力は持っていないと解釈できてしまうことです。

今回ご紹介した内容を総括すると、うざいという感情に負けてしまうことで、ありとあらゆる原理原則にひっかかってしまい、内部監査人として不適切であると判断することができます。

参照:内部監査の専門職的実施の国際基準

「うざい」という感情に負けないためには

内部監査人が「うざい」という感情に負けてはならない理由についてご理解頂いたところで、次は内部監査人が「うざい」という感情に負けないための手段について解説します。「うざい」という感情に負けないための最終的なゴールは、監査対象部門と良好な関係を築くことです。

仮に監査対象部門と言い争いになるようなことがあっても、内部監査人として適切に監査を実施しなければならないことはもちろんですが、監査対象部門の皆さまを尊敬する気持ちを持った上で、監査に積極的になって頂けるようなモチベーションを引き出す必要があります。これを怠ると、内部監査はこの先もうざいと思われてしまいます。

今回は、監査対象部門との良好な関係を構築しながら、監査対象部門による監査のモチベーションを向上させる方法について、2点ほど解説します。

責任者との打ち合わせ

1点目の方法は、責任者との定期的な打ち合わせを実施することです。

責任者との打ち合わせでは、チェックリストの監査項目や監査スケジュールなどについてご説明することが主流ですが、良好な関係を築く上では、監査対象部門の責任者が特にリスクだと感じている内容や、それに対する現段階の統制状況についても話し合うことが望ましいです。監査対象部門の責任者が特にリスクだと感じている内容を話し合うべき理由は、リスクが顕在化してほしくないという気持ちは監査対象部門も内部監査部門も同じだからです。

あくまで荒探しをしたいのではなく、リスクが顕在化した際に生じる様々な悪影響を及ぼすことが無いよう、内部監査という観点で協力したいという意思表示を示すことが重要であり、これが仲間意識を生み、良好な関係に発展します。

また、現段階のリスクに対する統制状況についてヒアリングし、素晴らしいと感じた点は必ず監査対象部門の責任者に伝えることも望ましいです。これにより、監査対象部門による監査のモチベーションUPに繋がることがありますので、賞賛すべき点があれば必ず伝えるようにしましょう。

ロールモデルとして採用

2点目は、ロールモデルとしての採用です。

監査対象部門による改善内容やリスクに対する統制方法が良ければ、それらの行動をロールモデルとして採用し、他の監査対象部門にご紹介します。この一連の行動は、「スポットライト効果」という効果を含んでおり、ロールモデルとして採用された監査対象部門の監査に対するモチベーションUPに繋がるだけでなく、他の監査対象部門にロールモデルになりたいと思わせるモチベーションを構築することができる点がメリットです。

具体的な手法は様々ですが、ロールモデルとして採用されたいと思わせるようにすることが大切です。そのために、監査対象部門が実施した改善内容や統制方法をロールモデルとして採用する際は、なるべく具体的かつ分かりやすく、何がどのように良いのかを明確にしましょう。

また、ロールモデルとして採用することと並行して、監査のチェックリストの点数に応じてランキングを作成し、全部署にそのランキングをご紹介することで、上位にランクインしたいという意欲を掻き立てたり、様々な監査対象部門の好事例をなるべく多くピックアップすることで、選ばれることによる満足感を感じてもらうなども効果的です。是非、自社の状況に合わせて実行してみましょう。

参照:「スポットライト効果」を理解して職場の人間関係を良くする方法 - Hashikake [ハシカケ]

信頼関係を構築できる誠実な内部監査人を目指そう

正直なところ、うざいと思われてしまうことは、良い気分にならないと思います。特に、新人の内部監査人の場合、うざいと思われてしまっていることを気にしてしまい、監査業務を適切に実施できない可能性もあるかと思います。ベテランの監査人からすれば、あり得ない話に聞こえるかもしれませんが、若い内部監査人が増えてきている現状を考慮すると、決して少なくはないかと思います。

私としては、うざいと思われる感情に負けず、毅然とした態度を貫いて頂きたいと思っています。内部監査は企業の問題点を発見し、改善を促すだけでなく、不正防止や牽制効果もあり、大変意義があります。内部監査は会社に価値を付加することができるものです。うざいという感情に負けず、誇りを持って、内部監査に取り組んでいただければと思います。

本記事が、何か1つでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

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アビタスでは2005年にCIAプログラムを開講して以来、圧倒的な合格実績を挙げ続けています。合格率を上げるために、オリジナル教材と講師の質の良さにこだわっています。

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