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マサチューセッツ州立大学MBAプログラム第9期卒業生
(2016年4月入学)
外資系消費財メーカー マネジャー
ご経歴、年齢はインタビュー時のものです。
私は大学卒業後に物流会社で4年ほどサプライチェーン現場にて勤務する機会を得ました。その後、より上流工程に挑戦したいと考えて外資系医療機器メーカーに転職し、サプライチェーンプランニングの実務者として需要予測、供給管理、在庫適正化などに5年ほど従事しました。キャリア10年弱で、上流・下流を含めサプライチェーンを一通り経験したことになります。
そうした中、当時の勤務先の医療機器メーカーで、オペレーションプロセス改善をミッションとしたプロジェクト専門部署へ異動することになり、立場も実務者から管理者に変わりました。そして、新しい部署の新進気鋭な上司との1対1において、開口一番「お前は何ができる?」という質問を突き付けられたのです。私がそれまで経験した需要予測や供給管理についての具体的な業務内容について話すと「そんなことは聞いてない。どんなビジネススキル、どんなリーダーシップがあるか、それを教えてくれ。」と突き返されました。このやり取りは衝撃的でした。当時の私はそういったことに対する答えを一切持ち合わせていませんでした。
「自身の個別の経験や視点で細かい仕事の話はできても、俯瞰的な視座からビジネスの話をすることができない。」――当時30歳代前半だった私は、限られた業務領域の枠内でしか通用しない現実に気付かされました。そして、マネジメントやリーダーシップチームとも対等に話すことができる経営の知識や思考形態を身に付けたい、全社的な視座を培った上で自分の視座で仕事ができるように成長したい、という思いに至ったのです。その自己実現の方法がMBAでした。
例えば、財務コントローラーと話すならば、アカウンティング・ファイナンス知識は当然として、マーケティング、オペレーション、戦略を含めて広くビジネス領域についての見地がないと深まりません。この種の話し合いでしばしば俎上に上がるのが「在庫を減らすべき」という話題ですが、この話がことさら重視される理由は単に会社のKPIであるからではありません。真っ先に思いつくのは「在庫の保管料を減らせる」「将来の廃棄損を減らせる」というPLインパクトかもしれませんが、財務コントローラーにとってより重要なのは、在庫を借金で調達しているならば「資金調達にかかるキャピタルコスト(借入れに伴う利息への支払い)を減らせる」「キャッシュコンバージョンサイクルが改善する」「フリーキャッシュフローを増やして企業価値を高めたい」ということであったりします。一例に過ぎませんが、会社のファンクション(部署、部門)を全般的に理解することで他部署と本質的な目的に応じた議論ができるようになります。
一つ目の理由は、主要科目を網羅したスタンダードなMBAだということです。入学前の時点で私がMBAを通じて達成したかった目標の一つは、経営管理の全体像を理解することでした。どの科目がどういう意味合いをもつのか、どの科目を学べば一通り経営を理解したと言えるのかすぐに分かる概略図、または“海図”を頭の中で描けるようにしたかったのです。一度学んだ後に忘れた事柄があっても、この“海図”さえ頭にあれば体系の中のこの部分を忘れているのだとすぐに判別できますし、学び直しもしやすいはずです。経営の全体像をつかむには、単科コースやケーススタディに偏った経営スクールではなく、網羅的に学べるカリキュラムでなければ難しいように思われました。その点、標準的な科目を全て揃えたUMass MBAは、私の希望に合致したものでした。
二つ目は日本語と英語のバランスです。外資系企業に在籍していることもあって、原則英語で学びたいと思っていましたが、英語のみだと不安もありました。UMass MBAは英語での学びが中心ではあるものの、いざというときの日本語サポートがあり安心でした。
三つ目は授業時間の柔軟性です。家族の事情や私自身の仕事もあるので、学びたい時に学べるのは大きな利点でした。在学中に娘が生まれ子育てに集中したい時期があったので、私は当時1ターム休むことにしました。このようなことが容易にできるのもUMass MBAの柔軟性ならではです。
基礎課程、上級課程の二段階式カリキュラムは、学びやすく分かりやすい構成だと思いました。基礎課程で一通り科目を学んだ後、上級課程でワンランク上の内容を学び、そこに選択科目が加わるという構成です。実際に学んでみると、基礎課程と上級課程の縦のつながり、基礎・上級の各課程に含まれる科目間の横のつながりを強く感じました。この縦横のつながりは、各科目を深く理解し、経営管理の全体像を把握するのに大いに役立ちました。とりわけ、基礎課程と上級課程で同じ問題解決のフレームワーク(分析ツール、思考の枠組み)を何度も学び、それをアウトプットする機会がありますので定着しやすいと思います。
英語の授業については無暗に不安になる必要はありませんが、それでも情報のインプットの段階では膨大な量のテキストを読むのに相当の集中力が必要でした。そして、それ以上に大変なのがレポートのアウトプットです。論理的に文章を構築し、中身を膨らませ、分量のあるレポートを作成するのは非常に骨が折れました。苦労した甲斐あって、英語のライティングにはかなり慣れましたし、ロジックを組み立てる能力もしっかり鍛えられました。
上級課程については、基礎課程を終えてここからが本番というところでしょう。難易度が上がるというより、量が増え、論点に多様性が出るという印象です。上級課程を履修する際のポイントは、量の多さに埋もれることなく全体を俯瞰し、十分に時間を割くべきところと、さっと飛ばしてよいところを取捨選択することだと思います。上級課程のテキストには、基礎課程で学んだフレームワークが再度出てきます。私の場合、テキストを全て熟読するのでなく、新しいフレームワークや議論がないかさっとサーチするように速読して省力化をしていました。その分アウトプットを増やすことに重点を置き、基礎課程で一度学んだことを再度、そして数多くレポート作成することで確実に自分のものにしようと心掛けました。
MBAの知識・スキルは、本を読むだけでは習熟が困難だと思います。プログラムを通じて三度、四度と繰り返し学び、レポートでのアウトプットを続け、何度も跳ね返される。そうした経験を経てこそ、使えるレベルで身に付くと思います。
印象深い科目を二つ挙げると、一つは基礎・上級の両課程で受講したファイナンスの科目です。授業では、プロジェクトや企業の現在価値の計算から学び始めますが、この考えは社内での投資など実務ですぐに活用できます。また、キャッシュフロー分析を学んだことで、「仕入を抑えれば資金流出を防げるので、キャッシュフローが改善される」という流れが明確に分かり、在庫管理の重要性を改めて認識しました。
もう一つの印象的な科目は、『Strategy Formulation and Implementation(SFI)』です。この科目では、4人編成のチームで架空の企業を想定し、各メンバーが役割を分担した上で、競争環境、自社の競争優位性などを分析し、自社の戦略立案につなげ、その戦略の下で自分がどう動くかについてシミュレーションを行いました。他のメンバーとのミーティングが始まると何時間も喧々諤々の議論することが度々でしたし、有給を取って朝から晩まで勉強漬けになることもありました。大変ではありましたが、学びが実践に直結するという実感に溢れ、学ぶことの楽しさを再確認できました。オペレーションの科目で学んだ回帰分析を活用して結果をチームでシェアすることもあれば、メンバー間での意見のぶつけ合いを経てコンセンサスを取る過程を経験しリーダーシップを学ぶ機会もありました。まさしく、MBAで学んだあらゆる要素が詰まったキャップストーン(総仕上げ)に相応しい科目だったと思います。因みに、7~8チームある中で私達のチームが1位でフィニッシュできたことも良い思い出です。
メリットは効率的に学べるということです。通学が不要ですし、自分のタイミングで学べます。電車の移動中や仕事・子育ての合間でも学べます。逆にデメリットとしては、「集中して授業に臨む」「周りに即座的に反応する」「他の人達と議論を深め交流を図る」といった点では、対面授業に一歩劣るということです。これらメリット、デメリットを全て理解・整理し、デメリットを補っていけば理想に近い学びができると思います
これこそMBAの醍醐味です。同じような意識をもつ異業種・異職種の方達、経営者や百戦錬磨の経歴の持ち主の方達と共に学ぶことで、新鮮な見方を得ることができます。それぞれに仕事の常識や言語感覚が異なるため、自分の業種・職種本位では話が通じません。必然的に、自分がいるコンフォートゾーンから抜け出して汎用性のある言い回しで話すことになるので、普遍的なビジネスコミュニケーション術を体得する訓練にもなりました。加えて言えば、優秀な方達と知り合う機会を得られたのも大きな収穫でした。多忙な中でもテキストを読み込み誰より早くレポートを提出する人格者の方、議論をしても論破するのでなく調整を図るのが上手な方など、その姿勢から学ぶことが多々ありました。同期の方達とは今も連絡を取り続けています。
入学時に考えていた経営管理の全体像を理解したいという目標は、無事クリアできました。知識・スキルの習得という目標も、学んだ直後から職務でその時々の課題に応じてフレームワークを使ってみるという工夫もしつつ、達成できたと言えます。既に述べたことと重なりますが、細かい部分を忘れていても、経営分析や組織分析などの諸課題の分析にどのフレームワークを使うべきか判断する“海図”は頭の中に入っているので、少し調べればすぐに仕事で使えるようになっています。
実務で活用できた例としては、他部署と共同でマーケティングプランを作成したことが挙げられます。以前勤務していた医療機器メーカーはペースメーカー・、カテーテルなどの医療機器を顧客となる全国の病院に提供していました。財務諸表に照らし合わせて言えば、病院で製品が未使用で保管されている間は在庫として自社の「資産」の扱いになり、製品が使用されると自社の「売上」になります。ここで問題になるのが在庫プランです。営業側からすれば、病院に在庫を多めに配置して製品を使ってもらいやすくしたいのですが、その反面在庫効率が落ちる。逆に、サプライチェーン側は極力在庫を少なくしたいのですが、それだと病院に製品を使ってもらいにくくなる。両者のバランスをどう取るかが課題になります。その最適解は、自分のいるサプライチェーンの視座にとどまっていると見えてきません。
そこで役立ったのがマーケティングの知識です。私はまずマーケッターの視座に立って、在庫の配置を、マーケティング戦略の「プレイスメントストラテジー」として捉え直しました。そして、営業とマーケティング担当者と一緒になって、「どの病院にどのくらいの数の製品を配置するか」「一度配置すると製品の回転率はどの程度なのか」「在庫数に限りがある中でどう有効に使うか」といったことをデータを提示しながら考え抜きました。そして、営業側にも納得してもらいつつ、マーケティング担当者と共にマーケティングプランの策定をしました。結果として、全社的に最適な在庫配置ができたと自負しています。
このケースは、MBA入学を志すようになってから、私がこのように成長したいと考えてきた仕事のあり方――経営管理の知識や会社全体を見渡す視点を活かし、その上で自分の視座から主張することで課題を解決するという仕事のやり方――を実践できた好例だと思います。
MBA修了後しばらくして、ペットフードの会社に転職しました。ヘルスケア業界から未経験のFMCGですが、MBAで培った汎用的なスキルを自信にして、未知の問題にも冷静に、どっしり構えて取り組めています。今の会社でなくても、あらゆる業界・会社でサプライチェーンの問題解決ができるし、リーダーシップも発揮できるという確たる自信があります。転職や給料面だけでなく、精神面や仕事観も含めて、MBA取得に投じた費用は十分回収できました。
それほど高い英語力がなくても恐れる必要はないと思います。テキストは必ずしも全部読まなくてよいですし、スピーキング、リスニングは大きな障害になりません。リーディングとライティングは頑張りどころですが、学ぶ中で自然に上達していくというものでしょう。英語が不得意な人ほど伸びしろもあると考えればよいと思います。
英語力不足を補うやり方はいくらでもあります。例えば、入学前にMBAに関する簡単な日本語の書籍を読んでおくのもよいでしょう。その時点で意味が分からなくても、入学後に何度も触れることになります。触れる回数が多いほど、着実に理解が深まっていくので心配ありません。このほかにも、充実したサポート体制もあります。英語力不足でMBA入学を思い止まるのは勿体ないと思います。
人の脳は80歳、90歳になっても成長すると言う研究者もいます。人間の可能性は計り知れないのに、成長欲を強く持たないのは勿体ないと思います。MBAには学び取れることが数多くありますし、学びに対する貪欲さが知らず知らずのうちに深まっていくという特典も付いてきます。自分を絶えず成長させたい人にとって、MBAはそれを実現する絶好の場だと確信しています。成長したい方、貪欲に学びたい方は、是非挑戦してみてください。
また、最後になりますが、私の場合、妻の理解とサポートがなければMBA取得は不可能でした。子育てをしながら支えてくれた妻には感謝をしてもしきれません。