経営学と経済学はどちらもビジネスや経済活動に関連する学問ですが、目的や範囲が異なります。

経営学は企業運営と利益追求に焦点を当てており、経済学は社会全体の経済活動を広く分析する点が大きな違いです。

経営学を学ぶからには、経営学を構築したとされる学問の基本原理（経済学）を理解する必要があります。そのため、MBAのコア科目の中に経済学は必ず含まれているのです。

経営学を表面的な理解だけで留まらせないためには、経済学を知ることが必要です。

本記事では、経営学と経済学の違いや各学問を学ぶことで得られるメリット、知識を習得するために役立つ資格やスキルについて解説します。

目次
経営学と経済学の概要の違い
経営学と経済学を学ぶ目的・範囲の違い
経営学を学ぶメリット
経済学を学ぶメリット
経済学や経営学の知識が身につく・活かせる資格・スキル
経営学と経済学の違いを理解してそれぞれのメリットを知ろう

経営学と経済学はどちらも経済活動に関連した学問です。両者は密接していますが、目的や範囲が大きく異なります。

経営学は経済学の原理を企業や組織内の運営に焦点をあて、その他の学問（心理学）などの要素を幅広く活用する学問であるが、経済学が社会全体（マクロ）から家計（ミクロ）の経済活動の原理です。

各概要について、詳しく見ていきましょう。

経営学は、企業経営の効率的な組織運営や利益追求に焦点を当て、多角的に掘り下げる学問です。

会計、ファイナンス、経営理論、マーケティングなどを中心に、企業が事業を継続するための戦略について学びます。企業や組織の仕組みを知り、経営管理や労務管理などの専門的な知識が習得できます。

経営理論だけでなく、理論に基づいた実践的なスキルも学ぶのが特徴です。業種・業態を問わず、汎用的な知識やスキルを得られるため、経営者、起業家、管理職をはじめ、多くのビジネスパーソンから注目されています。

関連記事：Abitus MBA「選ばれる理由｜アビタスコラム｜経営学とは？ 経営学の基礎知識や経営学を学ぶメリット」

経済学は企業活動だけでなく、個人の消費行動、政府の景気政策、金利、株価など社会全体の経済活動を幅広く分析する学問です。

豊かな社会を築くために、限られた資源をどのように活用すればよいかを考察します。

経済学には、個々の経済主体の行動や市場メカニズムを分析するミクロ経済学と、経済全体の動きや現象を分析するマクロ経済学という2つの主要分野があります。

この2分野は互いに関連しており、経済現象を総合的に理解するには両方の知識が欠かせません。

経済学は、個人の投資判断や企業戦略、政府の政策決定などの幅広い場面で役立ちます。

経営学と経済学は、学問の目的や対象範囲が異なる学問です。

どちらも相互に密接していますが、それぞれの違いを把握することで、学習の焦点をより明確にできます。

双方を学ぶことで、企業経営の仕組みや社会全体の動きを理解し、ビジネスやキャリアにおいて効果的な判断を下す基盤となるでしょう。

ここでは、経営学と経済学それぞれの目的と対象範囲の違いについて掘り下げます。

経営学は、企業経営の仕組みを多角的に学ぶのが目的です。

企業活動の行動原理を知り、継続的に利益追求を効率的に行う方法や手段を身につけます。

経営学の主な範囲は企業活動全般です。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

• 組織の運営管理
• 経営戦略
• マーケティング
• 財務・会計
• 生産管理
• 情報システム
• イノベーションと起業家精神
• 国際経営
• 企業倫理と企業の社会的責任（CSR）

現代のビジネス環境に対応するためのデジタルトランスフォーメーションや持続可能な経営といった新しい分野も含まれます。

経営学は理論的な理解だけでなく、実践的な経営の方法を学ぶため、広範な領域をカバーします。

経済学を学ぶ目的は、社会全体の経済活動の仕組みを理解し、現実の経済問題を解決するための知識とスキルを身につけることです。

限られた資源を効率的に配分し、社会全体の豊かさを追求する方法を考察します。経済政策の効果を分析・予測する能力を養い、政策の改善や問題解決に貢献します。

経済学の主な範囲は社会経済全般です。具体的には以下が含まれます。

• ミクロ経済学
• マクロ経済学
• 国際経済学
• 財政学・金融論
• 計量経済学
• 経済史
• 行動経済学

理論的な分析に加え、実際のデータに基づいた問題解決スキルも習得できます。

ここでは、経営学を学ぶ主な以下のメリットを3つ紹介します。

• 経営管理が理解できるようになる
• マネジメントが理解できるようになる
• 生産管理が理解できるようになる

経営学では、経営管理について学びます。経営管理とは、組織の目標を効率的に達成するために、経営資源を適切に活用し、組織全体を運営する活動です。

経営管理では、組織の効率的な運営方法や意思決定プロセス、経営資源の最適な配分方法について理論的に学びます。そのため、実務に直結するリーダーシップスキルや問題解決能力、戦略的思考力が向上する点がメリットです。

ここで得た知識やスキルは、企業運営だけでなくビジネスパーソンとしてのキャリアアップにも大いに役立つことが期待できます。

経営学では、マネジメントについて学びます。マネジメントとは、組織の目標達成のために、ヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を効率的に運用することを指します。

マネジメントを学ぶことで、組織全体のプロジェクトを成功に導くためのプロジェクトマネジメントスキルを習得できる点がメリットです。

また、人材管理の重要性を理解し、長期視点で現状を把握できるようになります。変化するビジネス環境に柔軟に対応する能力も高まります。

特に、企業経営者や管理職、起業家などに求められるスキルですが、ビジネスパーソンとして成長したい人にとっても有益です。

経営学では、生産管理について学びます。生産管理とは、企業が製品の製造プロセスを効率的に管理し、最適化するための活動全般です。

品質、コスト、納期を最適に設定し、組織の利益を最大化するのが目的です。需要予測、原材料調達、製造管理から出荷に至るまで、全てのプロセスが生産管理の範囲です。

生産計画やサプライチェーン全体の最適化、コスト管理の徹底など、製造業やサービス業を問わず幅広い産業分野で活用できる知識とスキルが習得できます。

経営者や管理者はもちろん、該当する業界でキャリアアップを目指すビジネスパーソンにとっても有益です。

ここでは経済学を学ぶことで得られる、主な以下のメリットを3つ解説します。

• 経済の仕組みが理解できるようになる
• 体系的・論理的に経済の動きが見えるようになる
• ビジネス感覚が身につく

経済学では、社会構造や経済の仕組みについて学びます。

個人、企業、政府などの経済主体がどのように相互作用し、社会経済全体を形成しているのかを学べます。

市場メカニズムについての理解が深まり、需要と供給の法則や価格のメカニズムについて論理的に理解できるため、実際のビジネスシーンで価格設定する際にも役立つ点がメリットです。

加えて、マクロ経済の動向を把握すると、GDP、インフレーション、失業率などのマクロ経済指標の意味や関連性が理解できます。世界各国の経済状況を踏まえて、将来の動向を予測する力も身につきます。

経済学では、体系的・論理的に経済の動きについて学びます。

それぞれの事象を理論的に分析し、課題解決に導く力が身につく点がメリットです。数字やデータを扱うため、データの適切な解釈方法や数学的思考力も習得できます。

複雑な経済モデルを単純化して捉える視点を養い、経済政策の予測や長期視点、グローバル経済の理解などが深まります。

そのため、投資判断や消費行動、価格設定や資金調達など、個人やビジネスにおける経済的な意思決定を適切に行えるようになるでしょう。

経済学の知識は、金融、コンサルティング、政府機関など多岐にわたる分野でのキャリアに直結し、グローバルに活躍する基盤構築に役立ちます。

経済学を学ぶことで、ビジネス感覚が身につくことができます。

市場がどのように機能するかを理解することで、ビジネスチャンスや潜在的なリスクを見抜く力が養われます。

リスク管理やデータ分析能力、長期的視点を獲得することも、ビジネス感覚を磨く一方策です。特に、コスト・ベネフィットの分析力は、投資判断や意思決定に役立ちます。経営戦略の策定やマーケット分析において、的確な判断や効果的な対応が可能になります。

このように、幅広い理論を学び実際の経済現象を分析、解釈する能力を習得する中で、総合的なビジネス感覚が養われるのです。

経済学や経営学の知識を身につけるためには、それぞれの科目学習に加え、資格やスキルの取得が効果的です。

理論を実務に応用する力が養われ、キャリアアップだけでなく日常生活にも役立ちます。

ここでは、注目の資格とスキルを3つ、紹介します。

• ファイナンシャルプランナー
• 中小企業診断士
• MBA（経営学修士）

ファイナンシャルプランナー（FP）は、個人や家族のライフプランに基づき、ライフステージに合わせた財務計画を立案し、アドバイスを行う専門家です。

国家資格であるFP技能士（1級、2級、3級）に加え、民間資格のCFP®、AFPがあります。民間資格については、定期的な更新が必要です。

独立するために必要と言われているFP2級について、2024年5月の合格率を見ていきましょう。

主催者	試験内容	合格率
日本FP協会	学科試験	59.29％
	資産設計提案業務	54.87％
きんざい （一般社団法人金融財政事情研究会）	個人資産相談業務	38.77％
	生保顧客資産相談業務	53.18％

FP2級の合格に必要な勉強時間は150〜300時間とされています。

金融業・保険業・不動産などさまざまな業界で活用できます。また、自分自身の生活設計にも役立つ資格です。

参考：日本FP協会「FP資格取得を目指す｜ファイナンシャル・プランナー（FP）とは」

中小企業診断士は、経営コンサルタントとして唯一の国家資格です。中小企業の経営診断や経営改善のアドバイスを行います。経営全般に関する幅広い知識が必要です。

試験範囲は広く、次の7科目です。

• 経済学・経済政策
• 財務・会計
• 企業経営理論
• 運営管理（オペレーション・マネジメント）
• 経営法務
• 経営情報システム
• 中小企業経営・中小企業政策

2023年度の第1次試験の合格率は29.6％、第2次試験の合格率は18.9％でした。合格に必要な勉強時間はおよそ1,000時間とされています。

難易度は高めですが、経済学・経営学に関する幅広い知識を証明できる資格です。

参考：一般社団法人中小企業診断協会「中小企業診断士制度｜中小企業診断士ってなに？」

MBAとは、経営学の大学院修士を修了した人に授与される学位です。経営戦略、マーケティング、財務・会計など、企業経営に必要な幅広い知識を体系的に学びます。

経営に関する豊富な知識とスキルを習得できるため、経営者や起業家、管理職をはじめ、さまざまなビジネスパーソンに注目されています。

また一般的に、MBAでは必修科目としてマクロ経済学とミクロ経済学を履修することが求められています。そのため、経済に関する知識も深まるでしょう。

MBAを取得するには通常1～2年必要です。例えば、2年間のフルタイムを選択した場合の時間は、1,000～1,500時間程度とされています。

また、1年制、パートタイム、オンライン学習などの選択肢もあり、それぞれに必要な勉強時間は異なります。

関連記事：Abitus UMass MBA「MBA（経営学修士）とは？ MBAの種類やメリット・難易度を解説」

経営学と経済学はどちらもビジネス領域に関する学問です。理論だけでなく、実践的なスキルも得られます。

経営学は企業経営を対象とし、経済学は社会経済全体を対象としている点が大きな相違点です。

経営学では、効率的な企業経営に関する知識やスキルが身につきます。経済学では、投資判断や景気動向についての理解など、広く社会で役立つ知識やスキルが習得できます。

2つの学問は互いに深い関わりがあり、双方を学ぶことでさらに理解が深まります。

それぞれのメリットを知り、自分に適した学問を選んで学ぶことで、より効果的に知識を活用できるでしょう。

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