本ウェブサイトでは、Cookieを利用しています。本ウェブサイトを継続してご利用いただく際には、当社のCookieの利用方針に同意いただいたものとみなします。
本ウェブサイトでは、Cookieを利用しています。本ウェブサイトを継続してご利用いただく際には、当社のCookieの利用方針に同意いただいたものとみなします。
近年、企業の不祥事が相次いで発覚しており、不正リスク対策の重要性が高まっています。不正行為が発生すると企業は信頼を大きく損ない、取引先の減少や株価下落、賠償金発生、人材流出など深刻なダメージを被ることも少なくありません。
個人が不正行為に至る背景を機会、動機、正当化の3つの観点からモデル化したものが「不正のトライアングル」です。
本記事では、「不正のトライアングル」の基本理論をはじめ、実際の不正事例や理論に基づく防止策について詳しく解説します。
目次
不正のトライアングルとは?
不正のトライアングル理論における3要素
不正のトライアングルが生んだ2つの事例
不正のトライアングルに基づく3つの防止策
企業の内部不正対策に役立つ資格
公認不正検査士(CFE)の取得で企業の不正リスク対策を強化しよう
「不正のトライアングル」とは、1950年代にアメリカの犯罪学者ドナルド・R・クレッシーが提唱した理論です。個人が不正行為に手を染める際の心理的要因を、機会、動機、正当化の3つの観点からモデル化しました。
この理論では、不正は個人の道徳的欠陥のみでなく、環境的要因も複合的に影響していることを指摘しています。
例えば、企業環境やシステムを見直すことで、抜け穴を封じ「不正の機会」を与えないようにすれば、不正発生のリスクを大幅に低減できることを示唆しているのです。
不正のトライアングルの3要素を知り、対策を立てることで不正を効果的に防止できます。
不正のトライアングル理論では、次の3要素がそろった時に不正が発生するとされています。
この3要素が単独ではなく相互に作用することで不正行為の発生につながります。そのため、各要素の詳細を知ることは重要です。
各要素の中から、社内でコントロール可能なものを洗い出し適切な対策を立てることが、不正の減少につながります。
それぞれの要素について掘り下げていきましょう。
不正トライアングルの「機会」とは、不正を行うための手段や環境が整っている状態を指します。具体例としては以下のとおりです。
機会の種類 | 具体例 |
---|---|
監視の不足 | 監視カメラの未設置、上司などのチェック機能の欠如 |
内部統制の不備 | 業務プロセスの複雑化、業務の不透明化、権限の不適切な委譲 |
情報アクセスの管理不足 | パスワードの未設定、パスワードの管理不足 |
悪意のある人物がいる状況下で容易に不正が実行できる環境を放置しておくことは、不正行為を誘引することになります。
不正のトライアングルの「動機」とは、個人が不正行為に至る内的な誘因を指します。具体的な動機の例としては以下のとおりです。
動機の種類 | 具体例 |
---|---|
金銭的な動機 | ・個人的な借金や浪費癖 ・家族の教育費や医療費の負担 など |
金銭以外の動機 | ・過度な業績目標によるプレッシャー ・失敗や損失の隠ぺい ・会社や上司に対する復讐心 ・過度な出世欲 など |
問題解決や現状改善のために不正を働くケースも多く見られます。一般的に動機は個人の内面に根差しているため、不正発生前に外部から察知するのは困難です。
不正のトライアングルの「正当化」とは、不正行為を合理化する思考過程を指します。自分の行為に理由をつけて正当化することで、罪悪感を軽減しようとする考え方であり、具体的に見ると以下のようなものが当てはまります。
「正当化」に関する部分は、個人の価値観や倫理観に深く根差す一方で、企業の風土や文化の影響も大きく受ける部分です。そのため、不正を許容しない企業文化の構築やコンプライアンス教育の徹底により緩和できるでしょう。
「不正のトライアングル」が企業内の不正行為を招いた実例は数多くあります。過去の事例を分析することは、不正行為の防止策を考える上で重要です。
ここでは、以下の2つの事例について取り上げます。
それぞれを不正のトライアングルに照らし合わせて見ていきましょう。
営業担当として働いていた元社員が外部者と共謀して、架空の業務を業者に発注し、架空請求によって7億8,910万円もの大金を不正に得た事例があります。
この事例では、実際には業務を行っていないにもかかわらず、会社に架空の請求書を提出していました。
この事例を不正のトライアングルに当てはめて分析してみましょう。
要素 | 詳細 |
---|---|
機会 | 内部統制システムが脆弱だった |
動機 | 高級クラブでの飲食や高級車、ゴルフクラブなどの購入のためには会社からの給料だけでは足りなかった |
正当化 | 「売上や利益を上げて会社に貢献しているのだから、利益の一部を自分のものにするのは当然」と考えた |
事件発覚以降、この企業は再発防止のために内部統制システムを改善しました。また、内部監査を強化し、不正の発見や抑止機能の強化に努めています。
子会社2社の代表を兼務していた不動産会社の元役員が架空工事や水増し工事を発注、工事代金の一部を私的流用した事例について見ていきましょう。損害総額は3億5,700万円に上りました。
この事例を不正のトライアングルに当てはめて分析してみましょう。
要素 | 詳細 |
---|---|
機会 | ・子会社2社を兼務していた元役員は権限が強く、ガバナンスが機能していなかった ・重要な意思決定は元役員1人で実行できた |
動機 | ・競艇にのめり込み多額の掛け金を投じていた ・親戚・知人に多額の借金があった |
正当化 | ・親会社の専務取締役、子会社2社の最高経営責任者であったことから、自らが大いに事業に貢献しており、当然の報酬であると考えていた |
事件発覚後、この企業は再発防止のため、グループにおけるガバナンスの強化を実施しました。子会社と親会社の代表者を兼務することも原則禁止することで、権力の集中を防ぎ、ガバナンスの透明化を高めています。
不正のトライアングルの3要素である「機会」「動機」「正当化」に対応した防止策を講じるのは、不正行為の防止に非常に重要です。各要素を効果的に抑制することで、不正行為の発生を未然に防ぐことにつながります。
それぞれの防止策は次の通りです。
詳しく見ていきましょう。
「機会」への対策は、3要素の中で最も企業側が主体的に取り組みやすい要素です。
たとえ個人に動機や正当化の要素があったとしても、内部統制を整備し不正可能な機会をつくらないことで、不正の発生を大幅に軽減できます。
具体的には次の仕組みが有効です。
仕組みの種類 | 具体例 |
---|---|
職務分掌の徹底 | ・特定の個人に権限が集中しないよう、権限と責任を分離する |
承認・検証プロセスの導入 | ・不正が発生しやすい業務に上司や他部署の承認・検証プロセスを組み込む |
定期的なモニタリングの実施 | ・内部統制の弱点や問題点を早期に発見する |
情報セキュリティの強化 | ・監視カメラの設置 ・パスワードの適切な管理 ・テレワーク環境下のログの収集 など |
ただし、過度な監視は従業員にストレスを与えて逆効果となる場合もあります。信頼と効率のバランスを保つよう心がけましょう。
「動機」は個人の内面に関わる問題も多いため、完全に排除することは困難です。しかし、「動機を持たせないための環境づくり」に取り組むことは不正防止に有効と言えるでしょう。
例えば、以下のような取り組みを取り入れてみることでも不正防止の一助となります。
取り組みの例 | 詳細 |
---|---|
適切な評価制度の設計 | ・従業員が自分の努力を正当に評価されていると実感できる制度設計が重要 ・厳しすぎるノルマや不当な待遇は、従業員の不満を招き、不正行為への動機を生みやすい状況につながる |
ワークライフバランスの推進 | ・ワークライフバランスを推進することで、従業員の負担を軽減する ・長時間労働などの過度な業務負荷が不正行為の動機につながるケースもある |
風通しの良い職場環境作り | ・日々の積極的なコミュニケーションを進める ・1on1ミーティングや部門間交流を促し、従業員の不満を早期に察知できる仕組みを整える |
コンプライアンス教育の推進 | ・従業員にコンプライアンスの重要性を理解してもらう |
上記は一例となりますが、透明性の高い組織を構築することが不正の防止につながりやすくなります。
「正当化」も個人の倫理観に関わる部分であるため、完全な対策は困難です。しかし、コンプライアンス教育の実施や企業倫理の確立などによる抑止効果が期待できます。
例えば、社内規則を明文化することで抜け穴を排除し、違反行為に対する罰則を定めることで、不正行為の抑制を図ります。万が一、不正行為が発覚した際は、厳正な処分を行います。
また、コンプライアンス教育や研修を通じて、不正の影響を明確に伝え、企業や個人への責任感を育むことも不正抑止につながります。同時に、企業の社会的責任(CSR)を重視し、不正行為が社会に与える影響に対する従業員の理解を深めることも大切です。
従業員の倫理観を高め、「みんながやっている」「バレなければいい」という思考を払拭するよう努めましょう。
また、不正行為予防のためには、内部通報制度の整備も有効です。不正行為を容認しない企業文化の構築に取り組みましょう。
企業の不正リスク対策強化には、専門的な知識と技能を持った人材の育成が効果的です。不正リスクに対応できる人材を確保することで、不正行為の防止、発見、調査をより効果的に行えます。
代表的な資格は次の2つです。
それぞれの資格について詳しく見ていきましょう。
公認不正検査士(CFE)とは、不正対策の専門家であることを示す国際的な資格です。アメリカの公認不正検査士協会(ACFE)が認定しています。
この資格を取得すると、不正の手口や調査方法、調査技術など、不正リスクに対応できる知識が身につきます。
企業の内部監査部門などで活躍し、次のような活動を通じて不正対策を強化します。
CFEに関する詳しい情報は、関連ページでご確認ください。
関連ページ:アビタス CFE「CFE(公認不正検査士)とは? 資格の概要や魅力について解説」
公認内部監査人(CIA)とは、内部監査の国際資格です。アメリカの内部監査人協会(IIA)が認定しており、世界約190の国と地域で認定試験が実施されています。
CIAは、主に次の活動を通じて、企業の内部監査やコーポレートガバナンスに関する業務を担います。
CIAによる内部監査は、迅速な不正の摘発や不正行為防止につながります。
「不正のトライアングル」とは、個人が不正行為に至る背景を機会、動機、正当化の3つの観点からモデル化したものです。3要素それぞれに適切な対策を取ることが、従業員の不正リスク対策となります。
従業員による不祥事や不正行為が起きると、企業の評価が大幅に下がることは珍しくありません。長年築いてきた信頼を失い、売上や利益に影響を及ぼすこともあるでしょう。
企業にとって、不正リスク対策は欠かせません。
不正リスク対策には専門家の知識や知見が有効です。公認不正検査士(CFE)を取得して、不正リスク対策強化に努めましょう。
公認不正検査士(CFE)の資格取得を目指すなら、アビタスの利用を検討してみましょう。
アビタスでは、プログラムの開講以来、合格率が約80%という高い実績があります。
最新の試験傾向を踏まえた上で、学習しやすさを意識したオリジナルの教材を使用しています。できるだけ短期間で成果を出せるよう、トピックを細分化しているため効率の良い学習が可能です。
プログラムは資格試験の日程に合わせ2月と8月に開講しています。開講していない月でもeラーニングを利用した学習が可能で、最短3カ月での合格を目指せます。
専門用語になじみが薄い初学者でも無理なく学習できるように、専門用語を分かりやすく解説しているのも特徴です。
アビタスでは無料の説明会を実施しています。ぜひ、お気軽にご参加ください。
最近のエントリー