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  • 2024/02/21公開

コンプライアンスとは?遵守の必要性や対象範囲、必要な取り組みを解説

コンプライアンスとは?遵守の必要性や対象範囲、必要な取り組みを解説

コンプライアンス遵守とは、法令や法律だけでなく、業界や企業のルール、社会的なモラル、倫理規範などに従い行動することを指します。

企業でコンプライアンス違反があると、信用が低下し、企業として大きなダメージを受けることもあるため注意が必要です。

本記事では、コンプライアンスの具体例やメリット、違反した場合のリスクなどについて解説します。

目次
コンプライアンス遵守とは何か
コンプライアンスに関連する用語とその違い
コンプライアンスの対象範囲
コンプライアンス遵守の具体例とは
コンプライアンス違反のリスクとは
コンプライアンスの違反事例
コンプライアンス遵守が企業に与えるメリット
コンプライアンス遵守に必要な3つの取り組み
コンプライアンス遵守に役立つ「公認不正検査士(CFE)」
コンプライアンスの遵守は企業の責務

コンプライアンス遵守とは何か

企業経営において、法令遵守は欠かせません。しかし、それだけでは企業の信頼性や社会的責任を高めるには弱い部分があります。そこで求められるのが、企業のコンプライアンス遵守です。

コンプライアンス遵守とは、法令遵守に加え、企業倫理や社会的良識、社会規範、モラルなどを守ることを含んでおり、社会的ルールとして定められ明文化されている規律等の遵守を指します。

また、ここには各企業が独自に定めたルールやポリシー、明文化されていない規律等も含まれます。

企業がコンプライアンス違反を行うと、消費者からの信頼が低下し、企業のブランドイメージを損なうこととなります。売上の低下や利益の減少につながることも少なくありません。

一度失った信頼を取り戻すのには時間がかかり、場合によっては、コンプライアンス違反がきっかけで倒産に至るケースもあります。企業イメージを維持し社会的信頼を得続けるには、コンプライアンス遵守は欠かせないものといえるでしょう。

なぜコンプライアンス遵守が重要なのか

企業にコンプライアンス遵守が求められるようになった一因として、2000年代初頭に企業の不祥事が相次いだことが挙げられます。

リコール隠し、不正会計による株価操作、インサイダー取引、ブラック企業の長時間労働など様々な問題が明るみに出ました。

このような不祥事を防ぐためには、法令遵守に加えてコンプライアンス遵守が不可欠だという認識が広まりました。今では、企業の信頼性向上やブランドイメージ保護のためにもコンプライアンス遵守は欠かせないものだと考えられています。

コンプライアンスに関連する用語とその違い

コンプライアンスに関連する用語には様々なものがあります。例えば次のものです。

  • コーポレートガバナンス
  • CSR
  • 内部統制
  • 企業倫理・社会規範

これらの用語はそれぞれ、コンプライアンスと密接な関係があります。用語の意味や違いを理解することで、コンプライアンスに対する認識や理解が深まります。

それぞれの言葉の概要とコンプライアンスとの違いについて詳しく解説します。

コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスとは、企業の経営管理組織が適切に機能するための仕組みのことです。日本語では「企業統治」と訳されます。

株主を含む様々なステークホルダーの利益を公正に守り、経営の健全性と透明性を担保するためのルールや仕組みを整備することを目的としています。

一方、コンプライアンスは法令などの遵守を中心に据えたものです。コーポレートガバナンスは企業統治の仕組みそのものを適正化することで、コンプライアンス違反を未然に防ぐという関係があります。

つまり、コーポレートガバナンスはコンプライアンス経営の前提条件といえるでしょう。

CSR

CSRとは、「Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)」の頭文字を取った言葉です。企業が事業活動を通じて、経済・社会・環境などに与える影響を自覚し、ステークホルダーや社会全体に対して積極的に責任を果たすという考え方を指します。

例えば「自社の利益を追求するためなら、環境問題には配慮しない」「売上目標を達成するために、従業員の健康や心身には配慮せずに残業を強要する」という考えは、CSRを果たしているとはいえません。

コンプライアンスは、企業が果たすべき最低限の責任といえます。コンプライアンスを遵守した上で、さらなる社会貢献を実現すべきだという考えがCSRです。

内部統制

内部統制とは、コンプライアンスの遵守や財務報告の信頼性、業務の効率性や有効性を確保するための仕組みを指します。

金融商品取引法において、上場企業には内部統制報告書の提出が義務付けられています。そのため、上場企業は内部統制が不可欠です。

具体的な内容は、組織の理念の作成、業務プロセスの文書化、リスクの把握と評価、内部監査部門による監査など多岐にわたります。

内部統制は、コンプライアンスを実現するための基盤としての役割を持ちます。適切な内部統制を構築することは、コンプライアンス違反の防止にもつながります。

企業倫理・社会規範

企業倫理や社会規範とは、法令以外で企業が遵守すべきものを指します。企業や業界団体が定める行動規範などもここに含まれます。

コンプライアンスは法令遵守だけでなく、このような企業倫理や社会規範も含んでいるのです。つまり、企業倫理・社会規範はコンプライアンスの一部といえます。

例えば、ハラスメントや差別などは法令違反とならないものもありますが、企業内で行われると信頼や評価の低下につながります。このようなものが、企業倫理や社会規範に該当します。

コンプライアンスを遵守するためには、法令だけでなく企業倫理や社会規範についても深く理解し行動することが大切です。

コンプライアンスの対象範囲

コンプライアンスの範囲は、以下の3つの種類に分けられます。

  • 法令や法律
  • 倫理規範やモラル
  • 業界独自の規制・基準

それぞれについて見ていきましょう。

法令や法律

当然ですが、国や地方自治体が定めた法令や条例などを守ることは、コンプライアンス遵守の範囲の1つです。

企業は、会社法を始め労働基準に関する様々な法制度や税法、独占禁止法など、多くの法令や法律を理解し、遵守しなければなりません。これらに違反した場合、罰金・訴訟・業務停止命令などの法的制裁を受けることがあります。

グローバルに活躍する企業の場合、日本だけでなく様々な国の法令や法律を理解することが大切です。

倫理規範やモラル

企業は、倫理規範やモラルなどを遵守する必要があります。

例えば、ハラスメントや差別・誤解を招く広告などの禁止、製品の安全性の確保や環境保護への取り組みなどが該当します。

企業が透明性を保つためにも、倫理規範やモラルを意識したコンプライアンスの実践は欠かせません。

業界独自の規制・基準

法律で規定されていなくとも、業界独自に自主的に採択されている規制や独自の基準なども存在します。これらを守ることも、企業のコンプライアンス遵守にあたります。

業界独自の規制や基準としては、電子機器業界の技術・安全基準や、特定の業界における環境保護基準、IT業界などのプライバシーとデータ保護などが挙げられます。

このような業界独自の規制を守らなくても法律違反にはなりません。しかし、独自基準を守ることで、業界全体の信頼度向上につながります。

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コンプライアンス遵守の具体例とは

具体的にどのようなものがコンプライアンス遵守に該当するのでしょうか。ここでは、以下の4つの法令や法律に関する具体例について紹介します。

  • 個人情報保護法の遵守
  • 労働に関する法律の遵守
  • 反社会的勢力排除に関する法律の遵守
  • 環境保護に関する法律の遵守

1つずつ見ていきましょう。

個人情報保護法の遵守

個人情報保護法の主な目的は、個人情報を適正かつ効果的に扱い、個人の権利や利益を保護することです。

個人情報とは、生存している個人で、特定の個人を識別できる情報を指します。主なものは次の4つです。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 住所
  • 顔写真

個人情報を入手する際は利用目的を特定し、その範囲内でのみ利用することが求められます。保管や管理には十分に気を配らなければなりません。

労働に関する法律の遵守

一般的に、労働者は使用者と比べて弱い立場にあり、「労働者に対して十分な対価を支払わない」「有休が取得できない」など、労働者の利益が搾取されやすい状態にあります。

労働に関する法律の主な例を見ていきましょう。

法律名 概要
労働基準法 労働の条件や使用者の義務、違反時の罰則等を定め労働者を保護する法律
労働組合法 労働組合を作り会社と対等に立つことで、労働者の地位を向上するよう保護する法律
労働契約法 労働者と使用者が対等な立場で労働契約を締結・変更できるよう保護するための法律

この他にも最低賃金法、労働安全衛生法、職業安定法など多くの法律があり、企業はこれらを遵守しなければなりません。

反社会的勢力排除に関する法律の遵守

企業と反社会的勢力とのつながりを絶つことを目的とした法令や法律、条例には様々なものがあります。

主な例は次の通りです。

  • 暴力団対策法
  • 暴力団排除条例
  • 犯罪収益移転防止法

建設業法や宅地建物取引業法、貸金業法などでは、事業の要件として「暴力団員等が在籍していないこと」という内容が盛り込まれています。

環境保護に関する法律の遵守

企業の発展のために自然環境や生活環境を無秩序に破壊すると、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音など、人の健康に影響を与える様々な問題が生じます。

環境保護に関する法律は、このような問題を未然に防ぎ、環境の保護や改善を行うことを主な目的としています。

具体的な例としては、以下のものが挙げられます。

法律名 概要
環境基本法 自然環境保全法
自然環境保全法 自然環境の保全を主な目的とする

なお、公害対策を目的とした「公害対策基本法」は、「環境基本法」の制定に伴い1993年に廃止されました。

コンプライアンス違反のリスクとは

コンプライアンス違反は、企業にリスクをもたらします。具体的には以下の4つのリスクが想定されるでしょう。

  • 法的リスク
  • 企業イメージの悪化
  • 経済的損失
  • 経営者の責任追及

1つずつその詳細を解説していきます。

法的リスク

法令や法律違反が発生した場合、罰金の支払いが求められるケースがあります。また、民事訴訟を起こされた場合、対応に多くの時間や費用が必要です。

業務停止命令や免許・許認可の取り消しは、経済的な機会損失に加えて企業としての信頼低下につながります。

企業イメージの悪化

コンプライアンス違反が明るみに出ると、ニュースやSNSで話題になるケースも少なくありません。

悪評が立てば、取引先や消費者、顧客、株主など利害関係者からの信用低下に加えて、社会全体においての企業イメージの悪化にもつながります。

経済的損失

企業の信頼度が落ちると、顧客離れや売上低下が生じることがあります。業務停止命令が下れば、一定期間は商品販売やサービス提供ができません。

また、罰金や訴訟費用の支払い、製品回収のコストなど様々な支出が必要になることがあり、大きな経済的損失が生じます。

経営者の責任追及

重大な金融犯罪や汚職などの大きな問題が起きた場合は、経営者の責任が追及されることがあります。違反内容によっては、解任されるケースも見られます。

また、経営者が刑事責任や民事責任、職務上の責任などについて問われることもあります。

このように、コンプライアンス違反は経営者にとっても大きなダメージを与えます。

コンプライアンスの違反事例

コンプライアンスを遵守するためには、実際の違反事例を多く知っておくことも大切です。コンプライアンス違反の事例には多くのものがありますが、主に次の3つに大別できます。

区分 事例
情報漏えいに関するもの 顧客情報が入っているUSBメモリを、従業員が無断で持ち出し、紛失した
法令や法律違反になるもの 廃棄物処理法に違反し、有害物質を不適切に処分した
労働環境などに関わるもの 上司が部下に対して暴言を吐くなどのハラスメントを行った

上記はあくまで一例ですが、その他の実際にあった具体的な事例を把握することで、対応策が立てやすくなります。

関連記事:アビタス CFE「コンプライアンス違反事例11選 違反のリスクや原因、3つの対策法を解説」

コンプライアンス遵守が企業に与えるメリット

コンプライアンスを遵守することは、企業にメリットを与えるものでもあります。

代表的なメリットとしては、以下の4つが挙げられます。

  • 法的リスクの回避
  • 社会的信頼の向上
  • 顧客満足度の向上
  • 従業員のモチベーション向上

コンプライアンスを遵守することで、法律や法令違反といった法的リスクを回避することができます。また、社会的責任を果たす企業として高い評価を得られる可能性も少なくありません。

加えて、コンプライアンスの遵守を目的とした取り組みにより、製品の安全性向上や透明性の高い取引が実現できれば、顧客満足度の向上も期待できます。

社内においても、コンプライアンス遵守の姿勢が浸透することで、ハラスメントなどがなくなり、従業員にとって働きやすい職場環境が実現します。結果として、従業員のモチベーション向上につながりやすくなるでしょう。

コンプライアンス遵守に必要な3つの取り組み

コンプライアンス違反が生じると、信頼の低下や賠償金の支払いなど、様々な悪影響が生じることがあります。一方、コンプライアンスが遵守されている職場では、組織内の士気向上が期待できます。

コンプライアンス違反を防止し、コンプライアンス遵守を徹底させるためには、次の3つの取り組みが大切です。

  • マニュアルやルールなどを作成する
  • コンプライアンス研修を行う
  • 相談窓口や監視・管理体制を整備する

詳しく見ていきましょう。

マニュアルやルールなどを作成する

コンプライアンス違反を起こしにくい仕組みをつくるためには、具体的なマニュアルやルールの作成が重要です。

企業の基本理念に基づき、行動規範や行動基準を作成します。実際の業務に基づいた、従業員にとって理解しやすい内容を意識しましょう。

法令や社内規程への対応方法と違反事例、その対処法を盛り込むことが大切です。陳腐化しないよう、定期的な見直しと更新が必要です。

従業員にマニュアルの存在を周知し、誰もがいつでも確認できる状態にしておきましょう。

コンプライアンス研修を行う

法令や倫理規範などを知らなければ、コンプライアンスを遵守することはできません。さらに、作成したマニュアルやルールを周知・徹底するためにも、従業員へのコンプライアンス研修が欠かせません。

ただし、一方的に説明するだけでは、形骸化することがあるため注意が必要です。

定期的なコンプライアンス研修で、コンプライアンスの重要性を繰り返し伝えることに加え、日常的なコミュニケーションの中でもコンプライアンスの意識を高める工夫が必要です。

相談窓口や監視・管理体制を整備する

相談窓口や内部通報制度の導入、定期的な社内調査などもコンプライアンス違反の早期発見や抑止に役立ちます。従業員が安心して利用できるよう、独立性と効率性を確保しましょう。

また、従業員の理解を得ながら、適切な監視や管理体制を整備することも重要です。効果を継続させるには、社会環境の変化やリスクの変容に合わせ、体制を定期的に見直し、改善することも欠かせません。

組織内にCFE(公認不正検査士)の資格取得者を置くことも、管理体制の整備に効果的です。

CFEは不正対策強化の専門家であることを示す国際的な資格です。資格取得者は、不正の予防、発見、調査に関する専門的な知識とスキルを習得しています。

関連ページ:アビタス CFE「CFE(公認不正検査士)とは? 資格の概要や魅力について解説」

コンプライアンス遵守に役立つ「公認不正検査士(CFE)」

コンプライアンス遵守に役立つ資格に、公認不正検査士(CFE)があります。CFEは不正に関する専門性を証明する国際資格です。

資格取得には法的な知識に加え、不正の発見方法、犯罪学の知見、関係者への聞き取り調査能力など、幅広い知識や能力が求められます。取得すると、内部監査、コンプライアンス(法務)、経理、財務などの職種で活用できます。

日本においては、監査法人やコンサルティングファーム、会計事務所などを中心にCFE資格取得者が求められています。

コンプライアンス違反など、企業内の不正リスクへの対応知識を強化したい場合は、CFEの資格取得者の採用を検討してみましょう。

コンプライアンスの遵守は企業の責務

コンプライアンス遵守とは、法令や法律に加え、社会的なモラルや倫理規範、企業や業界のルールなどに従い行動することを指します。

法令や法律に違反すると、罰金や罰則が科せられることや業務停止命令の対象となることもあります。その他にも、コンプライアンス違反を起こすと、企業に対する信頼度は低下し、売上低下や倒産につながるケースすらあります。

一方で、コンプライアンス遵守の姿勢が社風に根付くことで、従業員にとって働きやすい職場となり、企業価値の向上や優秀な人材の確保が期待できます。

多くのリスクを回避するためにも、コンプライアンス遵守は欠かせません。

コンプライアンス遵守に役立つ資格として、CFE(公認不正検査士)があります。企業内の不正リスクへの対応知識を強化したい場合、取得を検討してみましょう。

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