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  • 2024/06/25公開

不祥事対応・不祥事予防のプリンシプルとは?6つの原則を中心に解説

不祥事対応・不祥事予防のプリンシプルとは?6つの原則を中心に解説

近年、上場会社による不正会計や情報隠蔽等の不祥事が相次ぎ、社会に大きな影響を与えています。

こうした状況を受け、日本取引所自主規制法人は、2016年に「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」、2018年に「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」を策定しました。

本記事ではそれぞれの原則について詳しく解説していきます。

目次
上場会社における不祥事対応のプリンシプルとは
上場会社における不祥事予防のプリンシプルの6つの原則
不祥事の抑止や対策に役立つ資格
不祥事対応・不祥事予防のプリンシプルをおさえて健全な企業活動を進めよう

上場会社における不祥事対応のプリンシプルとは

「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」とは、2016年2月24日に日本取引所自主規制法人が策定したものです。

上場会社が不正会計や情報隠蔽等の不祥事に直面した際に、強く期待される対応や行動に関する原則(プリンシプル)が提示されています。

近年、業種や規模を問わず企業における不祥事が表面化し報道されていることを受け、策定されました。企業の不祥事が頻発すると、ステークホルダーからの信頼が失われ資本主義全体の信頼性までも大きく損なう可能性があるためです。

プリンシプルに法的拘束力はありませんが、上場会社にとってプリンシプルは不祥事対応の重要な指針となるでしょう。

参照:株式会社日本取引所グループ「公表資料|『上場会社における不祥事対応のプリンシプル』の策定について」

2016年の策定内容

2016年に発表された「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」の原則は次の4つです。

  • 原則1:不祥事の根本的な原因の解明
  • 原則2:第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保
  • 原則3:実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行
  • 原則4:迅速かつ的確な情報開示

不祥事が発生した際に企業によって十分な解明を行い、結果を基に再発防止を図り、企業が自浄作用を発揮することを目的として策定されました。

不祥事が起きた際、企業は背景を含めた根本的な原因を解明するよう努めることが大切です。内部統制の有効性に疑惑が生じている場合などは、独立性・中立性・専門性を確保するために、第三者委員会の設置が求められます。

加えて、社会からの信頼を回復するためには、実効性の高い再発防止策や迅速で的確な情報開示が欠かせません。

上場会社における不祥事予防のプリンシプルの6つの原則

2018年には、新たに「不祥事予防のプリンシプル」として6つの原則が提示されました。

原則1:実を伴った実態把握
原則2:使命感に裏付けられた職責の全う
原則3:双方向のコミュニケーション
原則4:不正の芽の察知と機敏な対処
原則5:グループ全体を貫く経営管理
原則6:サプライチェーンを展望した責任感

2016年のプリンシプルは不祥事が発生した後の「対応」に重点が置かれていましたが、2018年では不祥事「予防」の視点から策定されているのが特徴です。

それぞれの原則について、詳しく掘り下げていきます。

参照:株式会社日本取引所グループ「公表資料|『上場会社における不祥事予防のプリンシプル』の策定について」

原則1:実を伴った実態把握

不祥事を予防するためには、自社のコンプライアンスの状況を正確に把握しなければなりません。

制度や運用状況だけでなく、企業風土や社員への意識の浸透度合いなどの実態を正確に把握することで、自社の弱点や不祥事の兆候が認識できます。

実態把握を怠ると、長時間労働やハラスメントの放置、内部通報制度の形骸化などに気付かず、深刻な問題に発展するケースも少なくありません。

こうした問題を防ぐには、正確な情報が全社に行き渡っているかを確認することが大切です。過去には問題視されなかった慣行でも、現在では不適切とみなされるケースがあるため、社会意識の変化も敏感にとらえることが求められます。

「自社のコンプライアンス体制は万全だ」という思い込みを捨て、客観的な自己検証を実施しましょう。

原則2:使命感に裏付けられた職責の全う

経営陣には、コンプライアンスへのコミットメントを明確にし、社内に浸透させることが求められます。

実力の及ばない目標設定、現場の実態を無視した品質基準や納期の設定はコンプライアンス違反の誘発に繋がります。

過去には、製造部門と品質保証部門の責任者を同一人物に据えた結果、製造部門の業績評価が品質維持よりも重視され、品質保証機能の実効性が毀損したケースが見られました。

こうしたコンプライアンス違反を防ぐためには、適切な監査・監督機能の設置が不可欠です。

監査・監督機関には、情報収集および客観的な分析・評価に基づいた積極的な行動が求められます。利益が相反する状況を招かないよう留意し、監査・監督機関の実務運用支援体制を構築しましょう。

こうした体制を構築した上で、全社員が使命感を持って職責を全うすることが、不祥事予防につながります。

原則3:双方向のコミュニケーション

不祥事を防ぐには、現場と経営陣が双方向のコミュニケーションを行い、コンプライアンス意識の共有を図ることが大切です。

経営陣には、現場が忌憚なく意見を言えるような環境づくりに努め、現場の問題意識を積極的に汲み上げることが求められます。

過去には、経営陣が各部門の実情や意見を踏まえずに独断で利益目標や業績改善目標を設定したため、中間管理層や現場のコンプライアンス意識を低下させ、不祥事を招いたケースがありました。

中間管理層には、経営陣のメッセージを現場に根付かせるとともに、現場の声を経営陣に伝えるパイプ的な役割が求められています。経営陣は、中間管理層に対して重要な役割を担っていることを正確に伝え、ハブ機能を十分に発揮させるよう努めなければなりません。

双方向のコミュニケーションが充実すると、現場の実態を無視した経営目標の設定がなくなり、不祥事予防につながります。

原則4:不正の芽の察知と機敏な対処

コンプライアンス違反をできるだけ早く把握し、速やかに対処することで、重大な不祥事への発展を未然に防止できます。

全ての企業に不正の芽は常に存在しているという前提のもと、不正の兆候を見逃さず、適切に対処することが重要です。

過去には、社内の複数のコンプライアンス違反に関する指摘に対して、調査担当者が積極的な調査を行わなかった結果、外部からの指摘で初めて不祥事が露見した例もありました。

このような事態を防ぐためには、早期発見、迅速な対処、業務改善という一連のサイクルを企業文化の中に定着させることが重要です。経営陣が継続的に、不正の察知と機敏な対処に取り組むことで、全社的なコンプライアンス意識の定着が見込めます。

ただし、形式のみに偏ったルールの押し付けでは効果がありません。実態に即し、要所を押さえた対応を継続して実施しましょう。

原則5:グループ全体を貫く経営管理

グループ会社が不祥事を起こした場合、企業全体の価値に甚大な影響を及ぼします。そのため、グループ全体に対する実効的な経営管理が必要です。

過去には、海外子会社との情報共有を怠った結果、海外子会社で起きた問題が内々で処理され、対処が遅れて問題が深刻化したケースもありました。

このような事態を防ぐためには、自社グループの構造や特性に応じて、各グループ会社の重要性やリスクの高低等を踏まえた管理体制の構築が重要です。

特に海外子会社や買収子会社の場合は、地理的距離による監査頻度の低下だけでなく、言語・文化・会計基準・法的制度などが異なることから、経営管理が希薄化する傾向が見られます。

M&Aなどを行う際は、そのことを踏まえた上で十分な情報収集を行い、必要な管理体制を検討することが必要です。買収後は有効な管理体制の速やかな構築と運用を行いましょう。

原則6:サプライチェーンを展望した責任感

製品やサービスの提供過程においては、アウトソーシング、委託・受託、元請・下請などが一般的です。そのため、自社の業務で問題が発生した場合、サプライチェーン全体に影響が及ぶことも少なくありません。

過去には、外部委託先に付与したセキュリティ権限を適切に管理しなかったことで、委託先従業員による情報漏洩を招き、委託先・委託元ともに世間からの信頼を失ったケースも見られます。

サプライチェーン全体における自社の役割を十分認識しておきましょう。例えば、先ほどのケースでは、必要に応じて受託者の業務状況の適切なモニタリングが必要になります。

サプライチェーン全体の問題は、たとえ直接の当事者でなくても、自社の評判や評価に直結します。サプライチェーン全体の健全性を意識し、責任ある行動を取るよう意識しましょう。

不祥事の抑止や対策に役立つ資格

不祥事への防止や対応においては、内部統制の整備も欠かせません。コンプライアンスや不正対策に関する専門知識を持つ人材は、内部統制の整備において重要な役割を果たします。

不正の抑止や対策に役立つ資格には次のものがあります。

  • ビジネスコンプライアンス検定
  • CFE(公認不正検査士)

資格取得を推奨し、社内に専門知識を持つ人材を配置することは、不正リスク軽減につながります。

それぞれの資格について詳しく見ていきましょう。

ビジネスコンプライアンス検定

ビジネスコンプライアンス検定は、企業で必要なコンプライアンスの知識を有していることを判定する検定試験です。

コンプライアンスとは法令遵守だけでなく、企業倫理や社会的良識、モラルの遵守も指します。社員がコンプライアンスについて正しく理解し、実践することが不正防止リスクの軽減につながります。

ビジネスコンプライアンス検定を受けることで、コンプライアンスに関する様々な知識が身につきます。

そのため、ビジネスコンプライアンス検定の受験は、社員のコンプライアンス意識を向上させ、不祥事リスクの抑止につながる有効な施策の1つと言えるでしょう。

ビジネスコンプライアンス検定について、詳しくはこちらの記事をどうぞ。

関連記事:アビタス CFE「ビジネスコンプライアンス検定」とは?試験内容や難易度などを紹介」

CFE(公認不正検査士)

CFE(公認不正検査士)は、不正調査のスペシャリストとして認められた人に与えられる国際的な資格です。

不正の予防、発見、調査、解決に必要な専門知識とスキルを有していることを証明します。

不正リスクへの対応が喫緊の課題となる中、自社業務の見直しや内部統制強化のためにCFE取得を目指すケースが増加しています。CFEは、不正のリスク評価、予防策の立案、不正の兆候の察知、調査の実施など、組織の不正対策全般において重要な役割を果たします。

従業員がCFEを取得することは、社内の不正リスク軽減につながります。

CFEについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

関連ページ:アビタス CFE「CFE(公認不正検査士)とは? 資格の概要や魅力について解説」

まずは無料の説明会にご参加ください。

不祥事対応・不祥事予防のプリンシプルをおさえて健全な企業活動を進めよう

上場会社による相次ぐ不祥事を受け、2016年2月に日本取引所自主規制法人が「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」を策定しました。

2018年には不祥事発生防止の観点から「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」が策定されています。

どちらも法的な拘束力はありませんが、企業として不祥事を防止し、万が一不祥事が発生した場合に適切な対応を図るためには重視したい原則です。

また、不祥事の防止や抑止を考えるのであれば。内部統制の整備も大切です。さらに健全な企業活動を進めるためには、ビジネスコンプライアンス検定やCFE(公認不正検査士)など、不正の抑止や対策に役立つ資格取得も検討してみましょう。

CFE(公認不正検査士)の合格を目指すならアビタス

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