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デジタル・フォレンジックとは、事実解明のためにパソコンやスマートフォンなどの電子機器から証拠となるデータを収集、分析する調査手法です。
近年のデジタル技術の進歩に伴い、重要性と適用範囲が急速に拡大しています。
犯罪や不正行為の原因究明、サイバー攻撃の原因究明など、さまざまな用途で活用されており、企業の不正対策に対しても有効な手法として取り入れられています。
本記事では、デジタル・フォレンジックの目的や手順について解説します。
目次
デジタル・フォレンジックとは
デジタル・フォレンジックの目的
デジタル・フォレンジックに必要な3要素
デジタル・フォレンジックの手順
デジタル・フォレンジックは企業の不正対策にも有効
デジタル・フォレンジックを効果的に取り入れ不正対策を進めよう
デジタル・フォレンジックとは、主に不正行為やコンピューター犯罪に関連して、パソコンやスマートフォンなどのデジタル媒体に保存されているデジタルデータを収集し、調査や分析を行う科学的調査手法です。
法的に有効な証拠を提供することを目的としており、情報が証拠として高い証明力を有するためにも、厳密な手順に従って実施する必要があります。
サイバー犯罪の捜査、企業内不正行為の調査、情報漏えいの解明などさまざまな場面で利用されています。
近年、デジタル化が加速し、多くの情報がデジタル形式で保存されているため、デジタル・フォレンジックの重要性が高まっているのです。
デジタル・フォレンジックは、民間企業の内部調査から刑事事件の捜査まで、幅広い分野で活用されている手法です。デジタル・フォレンジックが活用される目的としては、以下のようなものが挙げられます。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
企業内部の不正行為の原因究明や証拠取集を目的として、デジタル・フォレンジックが利用されています。
例えば、不正経理や談合、購買不正などを行う際にパソコンやスマートフォンなどを利用すると、デバイス上にさまざまな証拠が残ることも少なくありません。
そのため、不正行為を行ったとされる対象者のパソコンやスマートフォンのデータ解析を行います。
メールの送受信履歴、ファイルのコピー・削除履歴、外部デバイスとの接続履歴などを調べることで、不正行為の証拠を収集します。
デジタル・フォレンジックは、サイバー攻撃や情報漏えいの原因究明に広く活用されています。
企業がサイバー攻撃を受けた場合は、ネットワークログを解析するのが一般的です。攻撃の侵入経路や手法、影響範囲を特定し正確なタイムライン解析を行うことで、被害の全容を把握します。
また、顧客情報などの重要データが外部に流出した場合は、関連するコンピューターやサーバーのハードディスクを調査し、内部者の持ち出しや外部からの不正アクセスといった、データの流出経路や手段の特定を行います。
デジタル・フォレンジックは証拠収集や原因究明など、過去の事例に対応するだけでなく将来の不正防止効果も期待できます。
デジタル・フォレンジックを活用した監査を定期的に実施することで、不正ログや異常なデータ転送などを早期に発見し、内部不正を防ぐことが可能になります。
また、社内で不正証拠が確実に発見される態勢にあることを従業員に周知することで、不正行為の抑制力としても機能します。
デジタル・フォレンジックで収集したデータは、刑事訴訟や民事上の争いに証拠として提出する場合があり、法的にも高い証明力を有する必要があります。
そのために、デジタル・フォレンジックには、以下の3要素が必要となります。
各要素について、詳しく掘り下げていきましょう。
デジタル・フォレンジックを行う上で、最も重要な要素が手続きの正当性です。具体的には、個人情報保護法や不正アクセス禁止法などの関連法令を遵守して、データを解析することを指します。
情報収集の際に法律で定められた範囲で管理や解析が行われていない場合、手続きの正当性は主張できません。定められた手続きに則り、電子機器や媒体を取り扱うことが必要です。
また、調査対象のプライバシーを尊重し、必要以上のデータアクセスを避けることも求められます。
デジタルデータは複製や改変を容易に行うことが可能です。しかし、改変したデータを証拠として用いることはできません。
そのため、データが改変されておらず、間違いなく事実であることを示さなければなりません。これが、解析の正確性です。
解析の正確性を保つためには、ハッシュ値など適切な手法や技術を用い、論理的・技術的に正しい手法で解析を行うことが必要です。解析過程の詳細な記録も求められます。
また、デジタルデータが示す事実に対して推測や解釈を加えて報告することは認められません。
デジタル・フォレンジックには、客観的に正当性を証明することが必要です。調査結果の信頼性と客観性を確保するためには、第三者による検証が重要です。
調査担当者以外の独立した専門家が、調査過程と結果を再確認し妥当性を評価することが必要です。この検証では、使用された手法の評価、データの完全性の確認、結果の再現性の検証などが含まれます。
検証者には、デジタル・フォレンジックに関する専門知識だけでなく中立性・独立性が必要です。
デジタル・フォレンジックの手順は次の通りです。
データ保全の前に調査の目的や範囲を明確にし、必要な機材や人員を準備しましょう。法的許可の取得が必要になるケースもあります。
状況や法的要件によって多少変更することはありますが、基本的な流れを把握しておくことは大切です。
なお、証拠の取り扱いの全過程を記録するため、段階ごとに適切に文書化することが求められます。
各手順について詳しく解説します。
パソコンやスマートフォン、タブレットなど、調査対象機器に保存されている電子データを保全・収集します。
データは改変前の状態を保つことが重要です。デジタルデータは誰でも簡単に加工できるため、上書き防止の対策を講じるなど、データの改変がなされないように管理しなければなりません。
証拠を保全するために、データのコピーを都度保存し、万が一、データが書き換えられた場合に備えることも有効です。
調査段階で既にファイルが削除されている可能性があります。また、システム障害などでデータが破損しているケースも見られます。
隠しファイルや暗号化されたデータを使い、不正行為に及んでいることもあるでしょう。
このようなデータを解析するためには、データの復元・復旧が欠かせません。専門的なソフトウェアツールを利用し、HDDやその他の媒体から削除されたファイルなどのデータ回復を試みます。
復元されたデータが重要な証拠となる可能性もあるため、データの復元や復旧は欠かせない工程です。
得られた情報を詳細に分析して、事案に関連する証拠を特定します。
具体的な解析手法の代表例をいくつか見ていきましょう。
解析手法 | 詳細 |
---|---|
タイムライン分析 | イベントを時系列で把握する |
メタデータ分析 | ファイルの作成者などの情報を抽出する |
キーワード検索 | 特定の単語や語句を含むファイルを抽出する |
ネットワーク通信の分析 | 外部との通信履歴や不正アクセスの痕跡を探す |
ファイルシステム分析 | 削除されたファイルや隠しファイルを発見する |
関係者に対して分かりやすく説明するために、これらの解析結果をグラフやチャートで可視化し、発生事象の全体像を把握します。
解析結果をまとめた報告書を作成します。報告書には、発見された証拠、解析手法、結論を記載し、法的な観点からも有効な形式で提供します。
証拠の収集・分析・保管に至るまでの全過程を詳細に記録し、証拠の信頼性を保証することが重要です。
この手順で作成した報告書は、法廷での証拠提出のほか、企業内でのセキュリティ強化、不正対策強化のために活用されます。
報告書には客観的かつ正確な情報のみを記載し、推測や個人の意見は記載してはいけません。
デジタル・フォレンジックは、企業の不正対策や原因究明などにも使われている技術です。デジタル化が急速に進化する中で不正行為も複雑化・巧妙化しています。
効果的な不正対策には、技術的知識だけでなく、財務、法律、調査技術など多角的な知識やスキルが必要です。また、グローバル化に伴い、国際的な基準や知識も求められます。
不正対策を体系的に学ぶ手段の1つとして、専門的な資格取得も有効な手段の1つといえるでしょう。
CFE(Certified Fraud Examiner;公認不正検査士)は、ACFE(公認不正検査士協会)が認定する国際的な不正対策の専門家資格です。
CFE資格取得者は、不正の防止・発見・調査に関する幅広い知識を持ち、デジタル・フォレンジックを含む最新の調査や技術にも精通しています。
試験は、財務取引・不正スキーム、法律、不正調査、不正防止と抑止の4分野をカバーしています。
ACFEによると、CFE資格保有者がいる組織は、いない組織と比較しても、不正検知までの期間が50%短く、不正被害の総額が62%低いといわれています。
その効果から、企業のコンプライアンスや内部監査、法務部門などでも注目されている資格といえるでしょう。
関連ページ:アビタス CFE「CFE(公認不正検査士)とは? 資格の概要や魅力について解説」
デジタル・フォレンジックは、パソコンやスマートフォンなどに保存されているデジタルデータを分析・解析し事実解明を行うための技術です。法廷の証拠としてだけでなく、企業内のサイバー攻撃や不正行為の原因究明、防止など幅広いシーンで活用されています。
デジタルデータは、誰でも簡単に複製・改ざん・削除できます。そのため、論理的・技術的に正しい手続きで解析を行うことが必要です。
デジタル・フォレンジックを行うためには高度な専門的知識やスキルが必要です。CFE(公認不正検査士)などの専門資格を取得することも、効果的な不正対策を進める上で有効な選択肢といえるでしょう。
CFE(公認不正検査士)の資格取得を目指すなら、アビタスの利用を検討してみましょう。プログラムの開講以来、合格率が約80%という高い実績があります。
アビタスでは最新の試験傾向を踏まえた上で、学習しやすさを意識したオリジナルの教材を使用しています。できるだけ短期間で成果を出せるよう、トピックを細分化しているため効率の良い学習が可能です。
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