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簿記には日商簿記・全経簿記・全商簿記・日ビ簿記と、4つの種類があります。 簿記検定を受けるにあたって、どれを取得すればよいか分からず迷う人もいるでしょう。
本記事では、それぞれの違いや選び方について分かりやすく解説します。どれを取得しようか迷っている方は参考にしてください。
目次
日商簿記(日本商工会議所 簿記検定試験)とは
全経簿記(全国経理教育協会 簿記能力検定)とは
全商簿記(全国商業高等学校協会 簿記実務検定試験)とは
日ビ簿記(日本ビジネス技能検定協会 簿記能力検定試験)とは
簿記検定試験毎の違いをふまえた選び方
仕事で活用する簿記資格を取るなら日商簿記を目指そう
日商簿記は、日本商工会議所が1954年にスタートした歴史ある簿記検定試験です。一般的にビジネスシーンなどで「簿記」といった場合には、日商簿記のことを示すケースが多いです。
日商簿記の階級それぞれの合格率は次の通りです。
日商簿記 | 合格率(第156回〜161回の平均値) |
3級 | 43.98% |
2級 | 21.52% |
1級 | 10.30% |
簿記初級 | 59.68% |
原価計算初級 | 91.53%(全4回分の平均値) |
受験者数も簿記3級では約35,000人〜50,000人と多く、簿記の知名度は高いため、就職や仕事で役立つ検定といえるでしょう。
日商簿記3級は、商業簿記のみの試験です。仕訳や帳簿記入、決算整理などの学習が必要になります。
比較的初歩の内容にはなりますが、会社で経理事務を行うための実用的な知識を習得できる資格といえるでしょう。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記 |
出題範囲 | 仕訳・帳簿記入・勘定記入・決算整理 |
合格率 | 43.98% |
取得すれば、経理の基礎知識を学んだ証になるので、就職や転職に有利になります。経理に興味があることや一般的な知識があることがアピールできるでしょう。
ただし、簿記2級取得者と比較されるため、履歴書におけるアピールとしてはやや物足りません。
参照:日本商工会議所・各地商工会議所「商工会議所の検定試験|簿記|3級」
日商簿記2級では、商業簿記と工業簿記が出題されます。学習の過程で、原価計算ができ、財務諸表の数字を見て経営内容を把握できるようになります。
経営管理に役立つ簿記の知識を学んだ証として、企業から求められる検定の1つといえるでしょう。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記・工業簿記 |
出題範囲 | 仕訳・現金預金・固定資産・有価証券・連結会計・決算整理・製造原価報告書作成・原価計算など |
合格率 | 21.52% |
日商簿記2級を取得すると、履歴書上でも経理に関する知識があることをアピールできます。
参照:日本商工会議所・各地商工会議所「商工会議所の検定試験|簿記|2級」
日商簿記1級を取得するということは、高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の知識を得ている証になります。経営管理や経営分析について学習するため、実務においても広く役立つ資格です。
会社からの評価アップや年収アップにつながる場合も少なくありません。また、取得すると、税理士試験の受験資格を得られます。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算 |
出題範囲 |
商業簿記:決算整理後残高試算表・財務諸表など 会計学:理論問題・計算問題など 工業簿記:製品原価計算・差異分析など 原価計算:投資の意思決定・差額原価収益分析など |
合格率 | 10.30% |
出題範囲は極めて広く、合格率は10%前後で難易度の高い試験です。一般的には、勉強に500~1,000時間程度が必要といわれており、取得までに多くの時間がかかります。
参照:日本商工会議所・各地商工会議所「商工会議所の検定試験|簿記|1級」
簿記初級は、商業簿記の知識の基本を問う内容です。難易度も高くはなく、初めて簿記の勉強をする人に適した検定といえるでしょう。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記の基本知識 |
出題範囲 | 簿記の基本原理・期中取引の処理・月次の集計 |
合格率 | 59.68% |
合格率は60%程度と高く、40分の試験時間となっています。商業簿記のことが全く分からず、基礎知識をつけたいと考えている人に適した試験です。
参照:日本商工会議所・各地商工会議所「商工会議所の検定試験|簿記|簿記初級」
原価計算初級では、原価計算の基本用語や原価と利益との関係や分析方法などが出題されます。原価計算に関する基礎的な知識を習得できるでしょう。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 原価計算の基本知識 |
出題範囲 |
原価計算の基礎概念・利益の計画と統制・製品別(サービス別)期間損益計算 |
合格率 | 91.53% |
試験時間は40分、合格率は90%前後となっており、難易度は高くありません。初めて原価計算を学ぶ人に適した試験といえるでしょう。
参照:日本商工会議所・各地商工会議所「商工会議所の検定試験|簿記|原価計算初級」
全経簿記の正式名称は「簿記能力検定」で、全国経理教育協会が主催しています。経理や会計の専門学校に通う学生向けの検定試験です。
主に学生が受験するため、ビジネスの場での知名度はそれほど高くありません。 日商簿記検定試験の予行演習をしたい人や経理職の人が受験することが多く、簿記の知識を向上させたいビジネスパーソンが受験することもあります。
参照:公益社団法人全国経理教育協会「能力検定試験|全経簿記能力検定」
参照:公益社団法人 全国経理教育協会 ZENKEI 簿記能力検定|実績
全経簿記3級では、小規模な企業での基本的な帳簿作成方法、複式簿記の仕組み、決算書類の作成方法などが出題されます。
日商簿記3級と比較すると難易度は低めです。 簿記の基本を理解できているか確認するのに適した検定といえるでしょう。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記 |
出題範囲 | 仕訳・元帳への伝票転記・精算表の作成 |
合格率 | 71.79%(第208回検定データより) |
日商簿記と比較すると知名度が低いため、この検定だけをもって就職に有利とは言い難い点がデメリットです。
全経簿記2級は商業簿記・工業簿記の2科目です。 商業簿記では、中規模な株式会社の経理担当者などに必要な簿記知識が出題されます。
工業簿記では、現場の経理担当者として必要とされる工程管理や基本的な帳簿作成などを学習します。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記・工業簿記 |
出題範囲 |
商業簿記:複式簿記・帳簿作成・決算整理・損益計算書・貸借対照表など 工業簿記:仕訳・原価計算・原価計算表の作成など |
合格率 |
商業簿記:56.25% 工業簿記:84.51%(第208回検定データより) |
こちらも同様に日商簿記2級と比較した場合、難易度・知名度ともに低めです。そのため、取得した場合でも、就職に有利とはいいきれません。
全経簿記1級は、商業簿記と会計学、工業簿記と原価計算が出題されます。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算 |
出題範囲 |
商業簿記・会計学:連結財務諸表・税金処理・決算整理など 工業簿記・原価計算:製造原価報告書・損益計算書・貸借対照表など |
合格率 |
商業簿記・会計学:26.78% 工業簿記・原価計算:57.64%(第208回検定データより) |
商業簿記と会計学では、複式簿記の仕組みを理解し、他の業種に応用できるかといった内容を学びます。学習の過程で、大規模な株式会社の経理担当として必要な知識が習得できる検定試験といえるでしょう。
工業簿記と原価計算では、中小規模の製造業企業における管理者や経理レベルの知識を問われます。
全経簿記上級では、上場企業の経理担当者や会計専門職に必要な知識が問題として出題されます。
合格すれば税理士試験の受験資格が得られる検定です。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算 |
出題範囲 |
商業簿記・会計学:決算整理・貸借対照表・連結財務諸表株主資本等変動計算書など 工業簿記・原価計算:製造原価報告書・損益計算書・貸借対照表・製造原価報告書・損益計算書など |
合格率 | 12.73%(第207回検定データより) |
日商簿記1級よりは易しく合格率もやや高いため、税理士試験の受験資格を得るためにこちらの試験を受ける人もいます。
帳簿の作成記入のルールなど、簿記の基礎について出題されます。難易度は低く合格率も高いため、会計の基礎知識を学びたい人に適しています。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記の基礎 |
出題範囲 | 帳簿作成・仕訳の構造・会計の構造・仕訳帳から元帳への転記・会計報告書作成 |
合格率 | 75.4%(第208回検定データより) |
知名度が低く基礎レベルの知識を問われる検定なので、就職の際にアピールポイントとして用いるのは難しいでしょう。
全商簿記は、全国商業高等学校協会が主催しています。主に商業高校の学生を対象としているため、本記事で紹介する4つの簿記検定で一番難易度が低い検定です。 全商簿記1級の内容は日商簿記2級に該当します。
日商簿記のほうが高い知名度を持つため、同レベルの日商簿記資格をあわせて取得しておくと、就職活動の際の評価が上がるでしょう。
参照:公益社団法人全国商業高等学校協会「検定試験|簿記実務検定試験」
参照:公益社団法人全国商業高等学校協会「令和3年度教育研究協議会 事務局より連絡事項」
商品売買業を営む個人企業向けの基礎・基本となる会計処理についての知識が習得できます。日商3級・全経3級よりも難易度は低く、簿記の基礎知識が学べます。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記の基礎 |
出題範囲 | 簿記の基礎・仕訳・帳簿と伝票・決算整理 |
合格率 | 64.1%(第93回データより) |
難易度や知名度が低いため、就職時のアピールとしてはやや物足りない検定といえるでしょう。
商品売買業を営む個人企業の発展的な会計処理と、株式会社の基本的な会計処理について問われます。簿記の知識を得るために適した検定といえるでしょう。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記 |
出題範囲 | 取引の記帳・仕訳・決算処理 |
合格率 | 46.9%(第93回データより) |
一方、日商簿記と比べて知名度が低いため、就活でのアピールとしては弱い印象です。
会計と原価計算の2つの試験からなる検定で、別々に受験します。 会計は株式会社の会計処理を中心に出題されます。
原価計算では、標準原価計算や直接原価計算の方法、部門別・製品別の原価計算などを行います。
試験内容・出題範囲・合格率は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 会計・原価計算 |
出題範囲 |
会計:総平均法・資産の評価・損益計算・連結財務諸表など 原価計算:費目別計算・部門別計算・製品別計算・標準原価計算・直接原価計算など |
合格率 |
会計:37.2% 原価計算:50.8%(第93回データより) |
1級取得を推薦入試の基準としている大学や短大もあるため、大学進学を検討している商業高校の生徒には適した検定といえるでしょう。
一方、就活時のアピールとしては物足りません。
日本ビジネス技能検定協会が主催する検定試験です。名前の通り、ビジネスパーソン向けの試験といえます。
日商簿記と比べると、知名度はやや低めです。日商簿記検定と試験日が近いため、両方受験する人もいます。
参照:一般財団法人日本ビジネス技能検定協会「検定試験について|簿記能力検定試験」
日ビ簿記は商業簿記の基礎的な知識が問われる試験で、出題範囲は日商簿記3級とほぼ同じです。
試験内容・出題範囲は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記 |
出題範囲 | 簿記の基本原理・取引の処理・試算表・株式会社会計 |
簿記の基礎知識が学べますが、知名度が低いため就職時・転職時のアピールとしては弱い傾向です。
商業簿記・工業簿記の2科目があり、それぞれ90分ずつ、別々の受験となります。出題範囲は日商簿記2級とほぼ同じです。
試験内容・出題範囲は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記・工業簿記 |
出題範囲 |
商業簿記:仕訳・引当金・決算処理・本支店会計・連結会計 工業簿記:工業簿記の本質・構造・原価計算・材料費の計算・記帳・消費価格の計算など |
工業簿記だけ、商業簿記だけを受験したい人にとっては適した検定といえるでしょう。
商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目で、出題範囲は日商簿記1級とほぼ同じです。
試験内容・出題範囲は下記の通りです。
項目 | 内容 |
試験内容 | 商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算 |
出題範囲 |
商業簿記・会計学:決算整理後残高試算表・財務諸表など 工業簿記・原価計算:CVP感度分析・回帰分析法・特殊原価調査など |
「商業簿記・会計学」と「工業簿記・原価計算」で、個別に受験が可能な点はメリットといえるでしょう。 また、日商簿記と比較した場合、日ビのほうが出題難易度は安定しているといわれています。
ただし、知名度が低い点は把握しておきましょう。
ここまで、日商・全経・全商・日ビ、それぞれの簿記検定試験について解説してきました。
合格率や試験内容などから判断した各試験の目安の難易度を下記にまとめましたので、参考にしてください。
項目 | 日商簿記 | 全経簿記 | 全商簿記 | 日ビ簿記 |
難易度(高い) | 1級 | 上級 | ─ | 1級 |
難易度(やや高い) | 2級 | 1級 | 1級 |
2級 |
難易度(普通) | 3級 | 2級 | 2級 | 3級 |
難易度(やや低い) | 簿記初級 | 3級 | 3級 | ─ |
難易度(低い) | 原価計算初級 | 基礎簿記会計 | ─ | ─ |
日ビ簿記は、日商簿記と同様の難易度といわれています。 ただし、日ビ簿記1級に合格しても税理士試験の受験資格を得ることはできません。
また、知名度がないため、就職時・転職時のアピールとして利用するのは難しい傾向にあります。 なお、全経簿記上級でも税理士試験の受験資格が得られます。
そのため、税理士の受験資格を得るために全経簿記上級を受験する人もいます。
4つの簿記資格試験の中で、最も知名度が高くビジネス現場で重宝されているのは日商簿記です。 簿記が活かせるのは経理だけではありません。
例えば、財務諸表が読めると、自社のみならず他社の経営状況も理解できるため、営業などでも役に立ちます。 知名度と難易度の高さから、就職時・転職時に履歴書で技能として最もアピールできるのは日商簿記といえるでしょう。
ビジネスシーンでステップアップしたいと考えている場合、商業簿記だけでなく工業簿記も理解できる、日商簿記2級がおすすめです。
関連記事:簿記2級は独学で合格可能?合格者の声やメリット・デメリットを解説
簿記を取得した後、その知識を活かして公認会計士・USCPA・税理士を目指す人は少なくありません。 簿記を勉強することで、会計分野が自分に向いているかどうかも把握できます。
日商簿記2級を取得した後、さらなるステップアップを考えている場合は、2級を取ったから1級という考え方だけでなく、公認会計士・USCPA・税理士などの簿記に関連した他資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
参考:USCPAとは?魅力や取得後のキャリア・難易度・試験内容を詳しく解説
USCPAの資格取得には1,200~1,500時間の学習が必要です。自分一人でUSCPAの学習をするのが大変な場合は、資格スクールの利用を検討しましょう。
国際資格の専門校であるアビタスでは、5,500人以上のUSCPA合格者を輩出しています。日本在住合格者の3人に2人はアビタス卒業生です。
オリジナルの日本語教材で学習できるだけでなく、サポート期間がUSCPAの標準学習期間の3倍以上の5年間あるため、多くの方に安心してご利用いただけています。
USCPA専門校アビタスでは、オンラインでUSCPAの概要や活かし方がつかめる「USCPA説明会」を行っています。 USCPAに興味がある方は、まずは無料説明会にお申し込みください。
※記事に記載の内容は2022年12月時点のものを参照しています。
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