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不正会計とは、企業の経営状態を偽るために財務諸表の数値を意図的に改ざんすることです。
不正会計が発覚すると、法的責任を問われるだけでなく、ブランドイメージの毀損や株価の暴落など、深刻な影響が生じかねません。
本記事では、不正会計について実際の事例を掘り下げ、発生原因や効果的な対策について解説します。
目次
不正会計とは
不正会計の種類
不正会計の事例
不正会計が起きる原因
不正会計を防ぐために効果的な4つの対策
不正会計の防止には公認不正検査士(CFE)資格の取得も効果的
不正会計とは、会計基準や法令に反し、財務諸表を意図的に改ざんする行為です。具体的には、架空取引よる売上の水増しや費用の先送りなどを指します。
実際よりも良い経営状況に見せかけ、投資家や債権者、取引先などを欺くことも多く見られます。
なお、不正会計に関連して「不適切会計」や「粉飾決算」などの言葉もあります。それぞれの意味の違いは以下のとおりです。
詳細 | |
---|---|
不適切会計 | ・会計基準や原則に違反した会計処理 ・意図的であるか否かは問わず、ケアレスミスなどのヒューマンエラーを含む |
不正会計 | ・財務情報を意図的に改ざんする行為 ・不適切会計の一種 |
粉飾決算 | ・実際よりも良い経営状況に見せかけるために、意図的に財務諸表を改ざんする行為 ・不正会計の一種 |
逆粉飾決算 | ・実際よりも悪い経営状況に見せかけるように意図的に改ざんする行為 ・税金逃れのために利益を隠す、配当を減らす目的で行われる ・不正会計の一種 |
不正会計には様々な種類があります。代表的なものは次の3つです。
種類 | 意味 |
---|---|
循環取引 | 複数の企業が共謀して売上や利益を水増しする行為 |
横領 | 資産の私的流用:他人の資産を無断で自分のものにする行為 |
押し込み販売 | 需要がないのに強引に商品を販売する行為 |
それぞれの概要について詳しく解説します。
循環取引とは、複数の企業が共謀して架空取引を行い、売上を水増しする行為です。架空の取引とは、実際には商品やサービスの売買を行っていないのに、あたかも取引があったかのように装うことを指します。
主な循環取引として次のものがあります。
循環取引の種類 | 意味 |
---|---|
スルー取引 | 自社が受けた注文をそのまま他社に回し売上を水増しする |
Uターン取引 | 商品が手数料を上乗せしながら複数の会社を回り、起点となる企業に戻ってくる取引 |
クロス取引 | 複数の企業が互いに通常より高い価格で商品などを販売し合い、在庫を保有し合う行為 |
共謀した企業の業績を良く見せるために行われることが多く、グループ内の企業などで起こりやすいのが特徴です。
横領とは役員および従業員が企業の資金や商品などを不正に使用する行為です。また、企業の資産を私的に流用するケースも見られます。
横領の主なパターンは次の3つです。
横領の種類 | 意味 |
---|---|
着服 | 経費の架空請求など、会社の金銭や商品を従業員が不正に自分のものにする行為 |
キックバック | 見返りや過剰なリベートなど、取引先から不当な金品を受け取る行為 |
横流し | 会社の商品や原材料、備品などを盗み不正に売却する行為 |
従業員のモラルの欠如や内部統制の不備などが原因で、横領を行うケースが多く見られます。
押し込み販売とは、商品の需要がないにもかかわらず、取引先などに対して無理やり商品を販売する行為を指します。
例えば、次のようなケースです。
期末・月末の売上目標達成や売上粉飾などを目的に、押し込み販売が行われることが多く見られます。
紹介した不正会計は実際の企業でも横行しており、発覚すれば大きな社会問題となります。
ここでは、実際に起きた事例を4つ取り上げます。
それぞれの事例について見ていきましょう。
電子機器メーカーAは、バブル期に発生した約1,000億円の損失を隠ぺいするため、「飛ばし」という手法で、海外ファンドに損失を移す不正会計を行いました。この不正は約10年間表に出ませんでしたが、最終的には内部告発で明るみに出ています。
本件では、社長が逮捕され、旧経営陣3人に有罪判決が下されました。長期間不正会計が発覚しなかった原因は、監査体制の不備にあったと指摘されています。
電機メーカーBでは、7年間で2,200億円もの利益を水増しする不正会計が行われていました。経営陣の過度な目標達成指示に屈した部下たちがプレッシャーに耐え切れず、不正な会計処理に手を染めたためです。関与した旧経営陣には3億円余りの賠償が命じられています。
また、上場企業のコンサルティング会社Cでは、社長である創業者が中心となり複数年にわたって架空売上を計上し、実際の売上の約3~4割もの不正水増しを行っていました。さらに、監査法人を欺くために、複数の巧妙な隠ぺい工作も行っています。
不正発覚後、両社の株価は急落し、最終的にはB社、C社ともに上場廃止に追い込まれています。
どちらの事例にも、市場の期待を裏切らないよう利益を出し続けなければならないというプレッシャーがありました。
振り袖レンタル業を営むD社は、売上高の架空計上などの不正会計により、金融機関から3,500万円の融資をだまし取ったとして、社長が逮捕されています。新規出店のための融資を得ることが目的で、約4,800万円もの売上高を架空計上していました。
なお、不正会計によって得た融資も用いて新店舗を出店、急拡大した結果、人件費をはじめとした出費によって借金が大幅に増加し財務状況が悪化しました。最終的に、D社は破産手続きを行いました。
成人式直前にD社が突然店舗を閉鎖し、振り袖を着られなくなった新成人が続出したため大きな話題となりました。
化粧品大手E社は、9期連続で債務超過であったにもかかわらず、不適切な会計処理により2,150億円もの粉飾決算を行っていたことが発覚しました。具体的には、売上高の水増し、子会社の巨額赤字の連結外し、在庫損失の未処理などで赤字を圧縮していました。
背景には、バブル崩壊等による長期的な業績不振がありました。起訴された元副社長は粉飾してでも利益を上げるよう経理担当幹部に伝え、自ら中心となって不正会計処理を実施しています。
E社は上場廃止と解散に追い込まれ、監査を担当していた公認会計士4人のうち3人が刑事罰を問われる事態となりました。
これまで取り上げた事例からも分かるように、不正会計が起きるにはいくつかの原因があります。不正会計を未然に防ぐためには、原因を把握しておくことが欠かせません。
不正会計が起きる原因として主なものは、次の3つです。
それぞれについて、詳しく解説します。
業績への過度なプレッシャーは、不正会計の一因となります。
投資家や市場の期待に応えるために経営者が実業績以上の成果を求め、役員や従業員に圧力をかけることは珍しくありません。また、個人的な報酬欲求や高すぎる売上目標がプレッシャーとなることもあります。
これらの圧力が、売上の水増しや費用の過小報告、取引先への押し込み販売などの不正会計につながる事例も多く見られます。
業績に対する過度なプレッシャーは不正会計を引き起こすことがあると認識しておきましょう。
内部統制の不備は、不正会計の一因となります。企業内の管理体制に問題があると、けん制機能が働かないことや不正な会計処理が見過ごされることにつながります。
例えば経理部門や営業部門の属人化が進み、特定の担当者に業務や権限が集中すると、不正のリスクが高まります。加えて、内部監査機能が十分でない場合、不正の早期発見が難しくなるでしょう。
不正会計を防止するためには、適切な内部統制システムの確立と運用が欠かせません。
適切な企業文化が育まれていない企業や倫理観が欠如している企業では、不正会計が生じやすくなります。
過度な成果主義は、目標達成至上主義を生み不正会計を招きやすい環境をつくります。また、不正が黙認される環境下では、従業員が「他の人もやっているから構わない」などと考え、不正に対する抵抗感が薄れるでしょう。
コンプライアンス研修などを通じ、不正会計を許容しない企業文化を育むことが重要です。
不正会計が明るみに出ると、上場廃止や倒産など、企業の存続を脅かすことにもつながります。不正会計を防ぐためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
効果的な対策として、次の4つが挙げられます。
詳しく解説します。
金銭を直接扱い管理する経理部門では、特に不正会計が起きやすくなります。不正会計防止のため、権限を複数の担当者に分散させることが有効です。相互けん制機能が働き、不正の抑止力となります。
ダブルチェック体制の整備や、担当者の定期的な変更を行うことで、特定の担当者による不正の継続を防止できます。
加えて、月末や年度末などに定期的な請求書と納品書を照合することも効果的です。
疑問点があれば、速やかにヒアリングや社外調査を実施し、解消することが不正会計の抑止につながります。
不正会計を防ぐには、社内のコンプライアンス教育の強化が欠かせません。
定期的な研修を実施し、経営陣や従業員に対して不正会計は許されない行為であるという意識を浸透させましょう。過去の不正会計事例や関連法規、罰則への理解を深めることも効果的です。
あわせて、コンプライアンス意識の高い人材を評価する仕組みを整備し、不正を許さない企業文化を育みましょう。
内部統制システムの確立は、不正会計防止に大きな役割を果たします。
例えば、業務の可視化、社内ルールの整備、権限の分散、定期的なモニタリングなどを実施します。ITシステムを活用した統制も効果的です。
自社に適した内部統制システムを構築し、効果的に機能すれば不正のリスクを大幅に軽減できます。
公認不正検査士(以下CFE)は不正対策強化の専門家であることを示す国際資格です。企業内の不正検査のために設けられました。
CFEの資格を取得することで、不正の手口や調査方法、調査技術など、不正リスクに対応できる知識が身につきます。
CFE資格保有者は、不正リスクに対応するための内部統制システムの構築に貢献できる人材として注目を集めています。
社内にCFE資格保有者がいることで、万が一不正会計が起きた際も、不正検知までの期間を短縮し不正被害の総額が抑制されることも期待できます。
関連ページ:アビタス CFE「CFE(公認不正検査士)とは? 資格の概要や魅力について解説」
不正会計とは、意図的に財務諸表の虚偽表示を行うことです。業績への過度なプレッシャーや内部統制の不備、倫理観の欠如などによって不正会計が起きることがあります。
不正会計が明るみに出ると、会社への信頼が失墜し、株価下落や倒産など深刻な事態につながることも珍しくありません。
不正会計を防止するためには、適切に内部統制システムを確立・運用する必要があり、不正リスクに対応できる高度な知識が必要です。
専門的知識を身につけるために、CFEの資格取得を検討してみましょう。
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