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  • 2023/01/15公開
  • 2023/05/29更新

税理士試験に独学合格は無理といわれるのはなぜ?合格するための勉強方法

税理士試験に独学合格は無理といわれるのはなぜ?合格するための勉強方法

税理士試験は、税理士に必要な学識および応用能力を判定することを目的として、国税審議会が行う会計系の「国家試験」です。

税理士試験は、司法試験とは異なり1科目ずつ受験することが可能で、会社勤めなどをしながらでも取得できる資格です。 一方で、1回での合格は現実的ではなく、数年かけて合格することが一般的となります。

独学での合格が不可能というわけではありませんが、難関試験であることから難しいとする見解が多く見受けられます。 この記事では、「税理士試験に独学合格は無理」とされる理由や、合格するための勉強方法を解説します。

目次
税理士試験に独学合格は無理と言われる3つの理由
独学で税理士になる方法
税理士の独学の代替案|予備校を一部利用
税理士の独学の代替案|税理士以外の資格を検討

税理士試験に独学合格は無理と言われる3つの理由

税理士試験を独学で挑戦する場合、講座や予備校の費用を払わずに済む、自分の学習ペースを自由に組めるなどのメリットがあります。

ただし、税理士試験の独学での合格は主に以下の3つの理由から難しいとされています。

  • 独学に適した市販テキストが少ない
  • 最適な学習方法やコツなどの情報を自分で収集しなくてはならない
  • 長期間のモチベーション維持が必要

独学に適した市販テキストが少ない

税理士試験では独学に適したテキストが少ないのが現状です。 独学用の教材は1〜2年前の税法を基に作られている場合が多く、法改正に対応できていないテキストも多くあります。

税法は毎年法改正があるので、簿記論と財務諸表論などの法改正が頻繁ではない科目以外では独学での学習が難しくなります。

最適な学習方法やコツなどの情報を自分で収集しなくてはならない

独学では、適した学習方法や学習のコツを自ら収集しなければなりません。 科目によって学習時間が異なるため、学習プランや受験スケジュールの作成は慎重に行う必要があります。

税理士試験の科目別学習時間の目安は以下の通りです。

【科目別学習時間の目安】

項目 時間 要件
簿記論 450~500時間 必須
財務諸表論 450~500時間
所得税法 600~700時間
選択必須
法人税法 600~700時間
相続税法 450~500時間
選択





消費税法 450~500時間
酒税法 150〜200時間
国税徴収法 150時間
住民税 200時間
事業税 200~250時間
固定資産税 250時間

税理士試験では、11科目のうち必須・選択必須・選択を組み合わせて5科目を受験することになります。 科目によって学習時間は150時間から700時間と幅があり、選択科目にもよりますが、約4,000時間の学習が必要になる場合もあります。

また、税務経験や日商簿記(2〜3級レベル)の知識の有無でも最適な学習・受験の順番は異なってきます。 基礎知識が必要な科目や業務経験によって、最適な学習方法のコツも変わります。

関連記事:「税理士ってどれくらい難しい?難易度や合格率、勉強時間をUSCPAと比較」

長期間のモチベーション維持が必要

税理士試験は1回の試験での合格が難しいため、一般的に取得までに数年という長い期間が必要とされる資格です。 そのため、長期間モチベーションを維持しながら学習することが、独学での合格を難しいものにしている一つの理由として挙げられます。

働きながら学習時間を確保し、最適な学習プランを作成し、長期間のスケジュールを管理するのは容易ではありません。

モチベーション維持のために、税理士補助(税務代理・税務書類の作成・税務相談を補助する仕事)として働きながら税理士を目指す方もいます。

独学で税理士になる方法

独学で税理士を目指すのは困難な道ですが、不可能ではありません。 独学で税理士を目指す場合、以下のようなステップが想定されます。

      1.必要な科目数を確認する
      2.スケジュールを引く
      3.科目を選択する
      4.テキストを選ぶ
      5.税理士試験に合格する
      6.実務経験をつける
      7.税理士名簿に登録する

上記のステップをそれぞれしっかりと遂行することで、独学での合格・税理士になることができます。詳しく見ていきましょう。

1.必要な科目数を確認する

税理士試験は全11科目の中から5科目選択し受験をする「科目合格制度」を取っています。

会計学に属する科目(簿記論および財務諸表論)の2科目と、税法に属する科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)のうち受験者の選択する3科目(所得税法または法人税法のいずれか1科目は必ず選択)の計5科目の合格が必要です。

受験者は1回に5科目を受験する必要はなく、1科目ずつ受験することができます。 そのため、科目の選択や受験の順序をしっかりと考えることが重要です。 また、5科目合格を目指すのではなく、学位取得等による試験科目の免除制度を検討することも1つの方法です。

修士または博士の学位を持つ方は簿記論、財務諸表論などの一部科目が免除されます。 さらに弁護士や公認会計士の資格を取得している方は税理士試験を受験することなく税理士登録が可能で、10年又は15年以上税務署に勤務した国税従事者は、税法系の科目が免除されます。

参照:国税庁「税理士試験|税理士試験の概要」

学位取得による科目免除は独学で合格しやすい?

学位取得による科目免除は学習の負担が軽減されるため、独学での合格率をあげることができます。 以下は、学位取得により免除される科目の具体的な内容です。

条件 免除科目
2002年3月までに大学院に進学した者 商学の学位(修士または博士)を持つ者は会計系の科目、経済学のうち財政学の学位(修士または博士)を持つ者は税法系の科目
2002年4月以降に大学院に進学した者で、会計系あるいは税法系の修士論文を執筆し学位を得た上で、それぞれの科目に1科目以上合格した者

・会計学に属する科目等の学位を持つ者は残る会計系の科目

・税法に属する科目等の学位を持つ者は残る税法系の科目

2002年4月以降に大学院に進学した者で、会計系あるいは税法系の博士論文を執筆し学位を得た者

・会計学に属する科目等の学位を持つ者は会計系の科目

・税法に属する科目等の学位を持つ者は税法系の科目

法改正により「平成14年(2002年)3月までに大学院に進学した方」と「平成14年(2002年)4月以降に大学院に進学した方」で免除科目の内容が異なっています。

国税従事による科目免除は独学で合格しやすい?

国税従事の経験がある場合にも科目免除が適用されます。

条件 免除科目
10年または15年以上税務署に勤務した国税従事者 経験した職域に応じて、税法(国税または地方税)に属する科目
23年または28年以上税務署に勤務し指定研修を修了した国税従事者 会計学に属する科目
国税従事した期間が通算して二十年以上になる者 税法に属する科目

国税従事の場合は「10年または15年以上税務署に勤務」と「23年または28年以上税務署に勤務」によって免除科目が変わります。 免除科目があることで学習の負担が軽減され、独学での合格可能性が高まります。

2. スケジュールを引く

税理士試験は合格まで3〜5年以上かかるのが一般的といわれています。 1年に1〜2科目ずつ取得するケースが多いですが、すべてに合格するのに10年以上かかることも少なくありません。

税理士試験に合格するには多くの学習時間を確保する必要があるため、社会人や学生などご自身の置かれている環境によってもスケジュールの立て方は変わります。

社会人の場合のスケジュール

社会人は学習時間の確保が難しく、現職の退職時期を検討する必要もあるため、より綿密なスケジュールを立てることが大切です。

税理士取得までの数年間を、仕事と両立しながら学習時間を確保する必要があり、効率が悪く独学の難易度は上がります。 社会人で仕事をしながら取得を目指す場合には、1日3時間の学習でも3年以上はかかります。

学生の場合のスケジュール

令和4年度の税理士法改正の受験資格要件の大幅な緩和により、令和5年度の税理士試験(第73回予定)からは、会計学に属する科目(簿記論・財務諸表論)は高校生や大学生でも受験できるようになりました。 受験資格要件の緩和により、学生は従来より早い段階で試験対策が行えます。

また、同改正で税法科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)の受験資格も履修科目の緩和が決定したため、受験の可能性が広がっています。

参照:国税庁「税理士試験|税理士試験受験資格の概要」

3. 科目を選択する

税理士試験の科目は全11科目のうち、5科目に合格する必要があります。 科目には「必須」「選択必須」「選択」の3つのカテゴリがあり、どの科目を選択するかは独学での合格に大きく関わります。

それぞれのカテゴリの学習のコツを見ていきましょう。

【必須】会計学に属する科目の学習のコツ

必須科目には、会計学の簿記論・財務諸表論の2科目があります。

  • 簿記論:日々の帳簿を記録・集計するルールを学び、実際に計算する
  • 財務諸表論:貸借対照表の計算書類の作成技術や理論を学ぶ

簿記論の出題はほとんどが計算問題で、簿記の知識を前提としています。 問題の範囲が広く量も多いため、時間内に解ける問題を正確に素早く解く計算能力が求められます。

財務諸表論では、財務諸表を作成するための技術や背景にある理論を学びます。 簿記論と財務諸表論は密接な関係にあるため、共通する項目も数多く、同時に学習すると効率的とされます。

1科目ずつ学習する場合には、計算が得意なら簿記論、暗記が得意なら財務諸表論から始めるとよいでしょう。

【選択必須】税法に属する科目(所得税法または法人税法)の選択と学習のコツ

選択必須科目には、税法に属する科目で所得税法と法人税法の2つがあり、必ずどちらか1科目を選択する必要があります。

  • 所得税法:所得税法の解釈や考え方を学ぶ
  • 法人税法:法人税法の解釈や考え方を学ぶ

所得税法は、個人の所得に対する税金について定めた法律である所得税法の解釈や考え方を学びます。 法人税法は、法人の所得等に対する税金について定めた法律である法人税法の解釈や考え方を学びます。

所得税法も法人税法も税理士試験の科目の中では出題範囲が広く学ぶ分量が多い科目であるため、両方選択するよりも片方だけ選択したほうが短期合格を狙えるでしょう。 所得税法は、税理士として主に個人を顧客とする場合に選択するとよい科目です。

一方の法人税法は、企業を顧客にする場合に実務で重要視される科目の1つと考えられています。 実務で使用する機会が多いため、多くの受験者が法人税法を選択しますが、難易度は高くなっています。

どちらも簿記論・財務諸表論との関連性が高く、簿記論と財務諸表論を合格あるいは受験後に開始することが学習上効果的です。

【選択】そのほかの税法に属する科目の選択と学習のコツ

選択科目には、相続税法をはじめとする7科目があり、その中から1〜2科目を選択することになります。

科目 内容
相続税法 相続税・贈与税の算出・申告・納付などを学ぶ
消費税法 消費税法についての理解を問われる
酒税法 酒類に課される税金についての理解を問われる
国税徴収法 税金滞納者への処分後の国税徴収について法律の理解を問われる
住民税 地方自治体から個人や法人に課される税金についての理解を問われる
事業税 事業に課される税金についての理解が問われる
固定資産税 不動産や事業用の償却資産に課される地方税についての理解が問われる

相続税法は学習範囲が広く、選択科目の中でも難しいとされています。

相続税法以外の消費税法、酒税法、国税徴収法、住民税、事業税、固定資産税は学習ボリュームが少なく、繰り返し問題に取り組むことが合格の鍵になります。

ただし、国税徴収法や固定資産税は実務では評価されにくい科目になるので、資格獲得後の働き方に合わせて科目選択を検討する必要があります。

4. テキストを選ぶ

独学で税理士試験の学習をする場合には、最新情報を反映させたテキストを選ぶ必要があります。 税法科目は毎年改定されるため、最新の税法に対応したテキストが出版されるのを待たなければなりません。

簿記論と財務諸表論においては法改正が頻繁ではないため、テキストでの独学でも合格が望める可能性があります。 ただし、範囲が膨大であるため、独学での学習は効率が悪い科目であるといわれています。

また、予備校で使用しているテキストは一般に販売しておらず、販売していても実際の講義で使用されているものではなく、模造したテキストであるケースがあります。

5. 税理士試験に合格する

税理士試験に合格する方法には大きく分けて「官報合格」と「認定合格」の2つがあります。

  • 官報合格:会計学に属する2科目と税法に属する3科目の合計5科目に合格する
  • 認定合格:試験科目が免除(一部または全科目)され合格する

税理士の資格取得には、5科目すべてに合格する官報合格と、一部または全科目の試験を免除される認定合格が必要です。

6. 実務経験をつける

税理士登録をする際には2年間の実務経験が必要です。 フルタイムの仕事を続けながら条件を満たすのは難しく、現在の仕事を退職し税理士事務所などで働くのが一般的です。

実務経験の条件である3,696時間を満たすためには、154時間×24カ月の期間を要するため、最低でも2年間は税理士事務所などで働く計算になります。 実務経験は実労働時間を基に計算され、以下の制限が設けられています。

  • 1日の従事時間は7時間
  • 1月の従事時間は154時間

上記以上の時間は対象外となるため、短期間で一気に条件を満たすことはできません。 いくつかの科目に合格した段階で税理士事務所で働き、並行して残り科目合格を目指すことは、モチベーション維持や実務経験を積めるためメリットがあります。

ただし、合格科目数によっても年収が変わるため、どのタイミングで実務経験を積むのかは検討する必要があります。 必修2科目、選択必修1科目に合格した段階で税理士事務所で働くのが一般的です。

参照:日本税理士会連合会「税理士登録の手引」

7. 税理士名簿に登録する

税理士になるためには、試験合格後に「日本税理士会連合会に備える税理士名簿」に登録しなければなりません。

「受験資格を満たす」「税理士試験合格もしくはそれに準ずる資格取得」「2年以上の実務経験」を揃え「税理士名簿へ登録」を行いはじめて税理士と名乗ることが可能になります。

税理士の独学の代替案|予備校を一部利用

独学の代替案として、すべて独学ではなく、予備校を併用するという方法もあります。 簿記論と財務諸表論は難易度が高く、税理士の学習の土台となる知識が多いため、最初に学ぶことがセオリーです。 この2科目は予備校を利用したほうが、学習をスムーズに進めることができます。

また、予備校で学習法や受験スケジュールの立て方のコツを習得することで、他の科目を独学で学ぶ準備をすることもできます。 難易度が高く範囲が広い土台となる科目を予備校で、酒税法・国税徴収法・住民税などは独学で進めるのがおすすめです。

教育訓練給付制度の利用

予備校にかかる費用に不安がある方は、厚生労働省が労働者のキャリアアップを支援する目的で設けている「教育訓練給付制度」の利用も検討しましょう。

教育訓練給付制度は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給される制度です。 教育訓練は、専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練の3種類に分かれており、各予備校でそれぞれの給付金に対応したコースが設けられています。

参照:厚生労働省「教育訓練給付制度」

税理士の独学の代替案|税理士以外の資格を検討

税理士は国家資格であり、また非常に難易度の高い資格です。 独学で取得するには会計に関する深い理解だけでなく、高いモチベーションや徹底した受験スケジュールの管理が欠かせません。 合格までは長い道のりになるため、本当に自分に必要な資格なのかを再度検討することも大切です。

また、会計に携わる資格には、公認会計士やファイナンシャルプランナー、USCPA(米国公認会計士)などがあるため、将来どういう就職・転職を考えているかを考えて選択するのがおすすめです。

税理士とよく比較されるUSCPA(米国公認会計士)とは

税理士と比較される資格として、USCPA(米国公認会計士)があります。 USCPAはアメリカ各州が認定する公認会計士資格で、近年注目を集めています。 税理士とUSCPAは学習範囲の一部に重複があるものの、似て非なるものです。 独占業務を行うことを目指すのであれば税理士一択ですが、会計業務で活躍するのは税理士の資格だけではありません。

USCPAの資格を取得すれば、海外での就職・転職はもちろん、日本でも外資系などにおいて英語で会計実務ができるため、企業にとって貴重な存在になります。 監査法人はもちろん、コンサルティングファームや日系・外資系を問わず、経理、財務、経営企画職で活かせる資格です。

USCPA資格を取得するには1,200〜1,500時間の学習が必要ですが、税理士に比べると難易度が低くコストパフォーマンスのよい資格ですので、税理士とあわせて検討してみてはいかがでしょうか。

関連記事:USCPAとは?魅力や取得後のキャリア・難易度・試験内容を詳しく解説

関連記事:「USCPA(米国公認会計士)と税理士どっちを取るべき?年収・勉強時間・合格率を比較」

USCPA(米国公認会計士)を取得するならアビタスで

USCPAの資格取得には1,200〜1,500時間の学習が必要です。自分一人でUSCPAの学習をするのが大変な場合は、資格スクールの利用を検討しましょう。 国際資格の専門校であるアビタスでは、5,500人以上のUSCPA合格者を輩出しています。

日本在住合格者の3人に2人はアビタス卒業生です。 オリジナルの日本語教材で学習できるだけでなく、サポート期間がUSCPAの標準学習期間の3倍以上の5年間あるため、多くの方に安心してご利用いただけています。

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※記事に記載の内容は2023年1月時点のものを参照しています。

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