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2022年に公益通報者保護法が改正されたことにより、一部の企業に対し内部通報制度の導入が義務づけられました。そのため、内部通報制度という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
しかしながら、そもそも、内部通報制度とはどのような制度でしょうか。
本記事では内部通報制度の概要と導入プロセスを分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
内部通報制度とは
内部通報制度は公益通報者保護法の改正により義務化へ
内部通報制度の導入プロセス
内部通報制度における3つの目的・メリット
内部不正の抑止にはCFE(公認不正検査士)の存在も重要
内部通報制度は企業の不正抑止の役割を果たす
内部通報制度とは、企業内部における不正行為や法令違反を早期発見し、調査および是正を試みる制度です。
社員から通報を受ける対応責任者の選定および窓口の設置により、誰でも通報できるような仕組みを構築します。内部通報制度はあくまで企業内部の人間が企業に対して通報する制度であるため、通報された内容の調査・是正は企業内で実施されます。
通報した従業員に対する企業側の不利益な取り扱いは禁止されており、通報対応責任者には通報者が特定できる情報の守秘義務が課せられています。
内部通報制度は公益通報者保護法によりルールが定められているため、制度導入においては公益通報者保護法についても知っておく必要があるでしょう。
参照:消費者庁「内部通報制度を活用して信頼度UP!~公益通報者保護法をご存じですか?~」
公益通報者保護法とは、労働者などが公益のために通報を行った行為を理由として、解雇などの不利益な扱いを受けることのないように、「どこへ」「どのような内容の」通報を行えば保護されるのかをルールとして明確化するものです。
2022年、公益通報者保護法の改正により、内部通報制度の導入が一部の企業に対し義務づけられています。
ここでは、以下2点に着目し、詳しく見ていきましょう。
従業員数が300人を超える企業には、内部通報制度の整備が義務づけられています。なお、従業員には、アルバイト・契約社員・非正規社員・派遣労働者なども含まれます。
導入していない場合、消費者庁の行政措置の対象となる可能性があるため留意しなければなりません。
従業員数が300人以下の企業においては、制度導入は努力義務とされています。
保護内容の具体例としては以下の内容があります。
なお、役員が公益通報をしたことを理由として解任された場合、解任は無効とはなりませんが、解任によって生じた損害の賠償請求を行うことができます。
内部通報制度を導入するにあたって、ただ単に窓口を設置するだけではうまくいきません。ここでは、以下の5つの導入ステップとポイントを見ていきましょう。
導入ステップを1つずつ実行していき、着実に内部通報制度を組織に定着させていくことが大切です。
内部通報制度の導入は、企業の特定の部署のみが検討するのではなく、経営者がその責任を持って取り組まなければなりません。
経営幹部が積極的に導入検討に臨む姿勢が重要です。まずは経営幹部内で導入検討を進めましょう。
次に、内部通報対応責任者と窓口の設置場所を選定します。選定時には、従業員が心理的に通報しやすい部署および担当者であるかを確認しましょう。
また、企業の外部に窓口を設置する事例やハラスメント窓口と併設する事例もあります。外部に設置する場合の委託先などの具体例は以下の通りです。
企業がグループ企業の子会社または関連会社の場合、本社に窓口を一括して設置する事例もあります。
経営幹部が不正行為に携わるケースも想定されます。そういった場合でも対応できるように、経営幹部から独立した報告を受け付ける体制の構築が求められます。
対応責任者が通報内容を社外取締役や監査役に報告できる体制を整えましょう。
公益通報者保護法では、通報した従業員に関する情報を取り扱う担当者を「従事者」として指定しなければならないことが明示されています。
従事者には守秘義務が課されるため、厳格に情報を管理することが求められます。通報者を特定する情報を漏えいした場合、30万円以下の罰金対象になる点を知っておきましょう。
責務の明確化を図るために、従事者の指定においては「従事者指定書」などの書面を交付することが推奨されています。
また、消費者庁のサイトにある「従事者向け研修動画」を活用するのも、役割の理解に役立つでしょう。
内部通報への対応において、遵守すべき事項や注意点などを内部規程や対応マニュアルとして明文化しましょう。この際に、内部通報の受付票も用意します。
内部規程や受付票は、消費者庁サイトの「内部通報制度導入支援キット」の中に例示があるので参考にするとよいでしょう。
参照:消費者庁「公益通報者保護制度|はじめての公益通報者保護法|内部通報制度導入支援キット」
体制が整ったら、窓口設置場所や内部規程・対応マニュアルの内容を従業員・役員などに周知が必要です。
従業員の関心を維持および向上させるためには、経営者から継続的に情報を発信し、利用を促すことが大切です。
なお、通報者が特定されてしまうような情報の漏えいを防ぐために、以下のような対策を実施するようにしましょう。
ただし、いくつかの情報の組み合わせにより、通報者の特定や情報の漏えいにつながる可能性もあるため取り扱いには注意が必要です。
制度の導入により、どのような目的やメリットが考えられるのでしょうか。
目的やメリットには以下の3つが挙げられます。
ここでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
内部通報制度は、社内不正や不祥事の抑止および早期発見、対応につながります。
消費者庁が公表している「平成28年度民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」では、不正発見への一番の助けになったのは「内部通報」という結果になりました。
内部通報制度の整備により、不正行為への監視の目が強化され、不正行為や法令違反への抑止効果が期待できます。
また、社内不正や不祥事などを早期に発見できるようになるため、リスクの最小化にもつながるでしょう。
参照:消費者庁「平成28年度民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」
企業の不正行為や法令違反の情報が内部告発または外部流出することで、急速かつ広範囲に情報が拡散されてしまう恐れがあります。
これは、企業への信用が急激に落ち込む原因になりかねません。
内部通報制度の構築・徹底により、企業内で情報を把握し是正できれば、外部への情報流出や告発が抑止され、企業の信用失墜の防止につながるでしょう。
内部通報制度の導入は、企業が従業員の声に真摯に耳を傾け、適切に対応できる体制を構築することです。これは、リスクの早期発見だけでなく、自浄作用の向上をもたらすでしょう。
結果的にコンプライアンスの遵守が進み、ステークホルダーからの信頼獲得や企業価値の維持・向上にもつながります。
内部通報制度の導入のみで満足せず、実効性を高めていくことが大切です。
内部不正の抑止として、企業内にCFE(公認不正検査士)の資格を有する人材を配置するのも有効です。
CFEとは不正対策強化の専門家であることを証明できる国際的な資格です。
資格保持者は「不正リスクに対応するための体制構築」に貢献する人材として、近年注目を集めています。CFEの資格を有することで得られた知識は、内部通報制度で内部通報対応責任者や調査担当者になったときにも活かせます。
また、CFE資格保有者がいる組織はいない組織と比較して、不正検知までの期間が50%短く、不正被害の総額が62%低いという調査結果(ACFE調査)があります。
CFE資格保有者の存在で、内部通報制度をさらに有効活用できるでしょう。
関連ページ:アビタス CFE「CFE(公認不正検査士)とは?資格の概要や魅力について解説」
本記事では、内部通報制度の概要と導入プロセスなどを解説しました。
内部通報制度は企業内部の人間が企業内の不正行為や法令違反を担当窓口に通報し、企業が調査・是正する制度です。公益通報者保護法により、従業員数が300人超の企業に対し、体制の構築が義務づけられています。
内部通報制度の導入は、社内不正や不祥事の抑止および早期発見につながります。加えて、外部への情報流出や通報の抑止効果が期待でき、企業の信頼を失墜させるようなリスクを最小限に抑えることが可能です。
また、内部不正の抑止にはCFE(公認不正検査士)の存在も重要となります。CFEは不正リスクに対応するための体制構築に貢献できる人材として期待されています。
内部通報制度の体制構築だけでなく、CFEの資格取得も検討しましょう。
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