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  • 2024/06/25公開

経営リスクとは?有価証券報告書の「事業等のリスク」の開示例とともに解説

経営リスクとは?有価証券報告書の「事業等のリスク」の開示例とともに解説

経営リスクとは、企業の経営活動に影響を及ぼす可能性のある様々な不確実性をいいます。

経営リスクには、企業の経営や方針に関する戦略リスク、資金調達や資金運用に関する財務リスク、法令や規制に対応するコンプライアンスリスクなど様々なものがあります。

具体的に、どのような要素が経営リスクになるのか、気になる人もいるでしょう。

本記事では、有価証券報告書で開示された事業リスクの具体例を中心に、経営者が知っておきたい経営リスクについて解説します。

目次
経営者が知っておきたい「経営リスク」
経営リスクの種類
有価証券報告書で開示が義務化された要素
有価証券報告書で開示された「事業等のリスク」の具体例
経営リスクを未然に防ぐリスクマネジメントの重要性
経営リスク等のリスクマネジメントの実務に役立つ資格
経営リスクは具体的に想定しておくことが重要

経営者が知っておきたい「経営リスク」

事業には、数多くの経営リスクがつきまといます。経営リスクとは、企業の経営活動に影響を及ぼす可能性のある様々な不確実性を指します。

例えば、企業の経営や方針に影響を与える経営戦略リスク、資金調達や資金運用などの財務リスク、経営陣や従業員による不祥事や法令違反などのコンプライアンスリスクなどです。

リスクが発生すると、企業の財務状況や評判に悪影響を与えるケースも少なくありません。

経営リスクの正確な予測は困難ですが、リスクの発生を未然に防ぎ、万が一発生した場合の被害を最小限に食い止めるために、経営者には適切なリスクマネジメントが求められます。

関連記事:アビタス CIA「リスク管理とは?リスク管理のフレームワークや3ラインモデルを解説」

経営リスクの種類

経営リスクの種類は多岐にわたります。ここでは、主なリスクの種類を6つ紹介します。

リスクの種類
経営戦略リスク ・新規事業への参入失敗
・M&Aの失敗
・資金計画の失敗
・経済危機
・経営判断ミス  など
財務リスク ・負債増加
・取引先の倒産
・貸し倒れ  など
自然災害リスク ・大地震
・津波
・台風
・洪水
・感染症 など
オペレーショナルリスク ・人材流出
・リコール
・悪質クレーム
・システム障害  など
コンプライアンスリスク ・個人情報の流出
・不正会計
・機密情報漏えい
・知的財産権侵害  など
人事労務リスク ・労働災害
・パワーハラスメント
・過労死  など

リスクマネジメントを実施する際は、経営リスクの洗い出しが重要になります。

なお、経営リスクと同様の意味で「企業リスク」という言葉が使われる場合もあります。

関連記事:アビタス CIA「企業リスクとは?リスクの種類・管理体制を構築する際のポイントを解説」

有価証券報告書で開示が義務化された要素

企業のガバナンス体制の透明性と実効性を高めるために、金融庁は2023年3月期から、有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」欄を新設しました。

開示が求められるのは、下記の4点です。

  • ガバナンス
  • 戦略
  • リスク管理
  • 指標及び目標

この4項目のうち、「戦略」と「指標及び目標」については、各企業が重要性を踏まえた上で開示を判断できます。一方「ガバナンス」と「リスク管理」については、開示が義務化されています。

企業には「環境・社会・経済」の3つの側面から、長期的に持続可能な状態の維持と発展が求められます。

また、有価証券報告書では、「事業等のリスク」についても開示が義務付けられています。リスクが潜在化する可能性の程度や時期、対応策について具体的な記載が求められます。

リスクの重要度や経営方針、経営戦略との関連性を踏まえた上で、分かりやすく記載しなければなりません。具体例については後述します。

参照:金融庁「金融庁説明資料|金融審議会ディスクロージャーWG報告(2022年6月)を踏まえた内閣法令改正の概要」
参照:金融庁「『事業等のリスク』の開示」

有価証券報告書で開示された「事業等のリスク」の具体例

「事業等のリスク」の内容は多岐にわたるため、有価証券報告書でどのように開示すればよいかと悩んでいる人もいるでしょう。

ここでは、2020年に金融庁に提出された各社の有価証券報告書から、事業等のリスクの具体例を3つ紹介します。

  • リスクが顕在化する時期を示した例
  • リスクを重要度によって区分した例
  • リスクのマイナス面・プラス面の影響を記載した例

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

参照:金融庁「記述情報の開示の好事例集2020 4.「事業等のリスク」の開示例」

リスクが顕在化する時期を示した例

コニカミノルタ株式会社が2020年3月期に公開した有価証券報告書から、2つのリスクについて見ていきましょう。

リスク(1) リスク(2)
内容 情報セキュリティ 新型コロナウイルス感染拡大の影響
詳細 顧客や取引先の個人情報や機密情報について、サイバー攻撃等による不正アクセス、改ざん、紛失、漏洩等が考えられる 各国政府のロックダウンや活動自粛要請などにより、サプライチェーンや生産活動の混乱が生じる
発生可能性のある時期 特定時期なし 1年以内
影響度
対応 ・適切な技術対策、社内管理体制の整備、従業員への教育等の対策
・サイバーインシデントへの対応 等
【リスクと機会】
・テレワークの導入による売り上げ減少のリスク
・治療薬の研究支援 等
【対応】
・サプライチェーン網の維持への取り組み
・ITサポートの拡充 等

リスクが潜在化する時期を明確に示しているのが特徴です。企業がリスクを適切に認識し、計画的に対応策を講じていることが分かります。

リスクを重要度によって区分した例

株式会社エヌ・ティ・ティ・データが2020年3月期に公開した有価証券報告書から、2つのリスクについて見ていきましょう。

リスク(1) リスク(2)
内容 システム開発リスク 経済動向・社会・制度等の変化に関するリスク
詳細 契約内容の曖昧性などが要因で、開発段階の想定と比べて原価増となることがある 社会基盤、法制度、気候変動等、様々なリスク要因の環境下にある
重要度 特に重要なリスク 重要なリスク
対応 一定以上の規模の案件を高リスク案件として選定し、進捗・課題・対応を定期的に管理 等 ・特定のリージョン(地域・エリア)に依存しない事業ポートフォリオの作成 等

「特に重要なリスク」と「重要なリスク」に区分することで、重要度の高いリスクが明確になり、限られたリソースを適切に配分できます。

リスクのマイナス面・プラス面の影響を記載した例

J.フロント リテイリング株式会社が2020年2月期に公開した有価証券報告書から、2つのリスクについて見ていきましょう。

リスク(1) リスク(2)
内容 既存事業の成熟から衰退への移行 取引先の転換
詳細 デジタル化による消費者のライフスタイルや消費行動の変化によって小売事業が成熟期から衰退期へ移行が進むリスク 取引先の業績悪化などで、今後数年の間に取引先企業が転換するリスク
マイナス面 既存事業のビジネスモデルが陳腐化し、顧客離れを招く 優良取引先企業の撤退や倒産による、品ぞろえや魅力の低下
プラス面 電子取引では得られない実店舗の購買・接客を見直し、顧客満足度向上につなげる データ分析による既存取引先の支援、新たな取引先企業の開拓 など

各リスクについて、マイナス面だけでなくプラス面も含めた影響を認識すると、リスクに対してバランスの取れた評価や対策が可能になります。

経営リスクを未然に防ぐリスクマネジメントの重要性

グローバル化や技術革新、自然災害の増大など、企業経営を取り巻く環境は年々複雑化しており、経営リスクが発生する可能性も固まっています。

事業継続のためには、リスクの防止策を講じるとともに、万が一発生した場合は早急に対応して損失を最小限に抑えなければなりません。

経営上起こりうる様々なリスクの予測と評価をした上で、対策を立案・実行するリスクマネジメントが重要性を増しています。場合によっては、リスクをチャンスと捉えることで、新たなビジネス機会が見いだせるということもあるでしょう。

リスクマネジメントへの取り組みは、顧客や取引先、ステークホルダーなどからの信頼獲得にもつながります。

関連記事:アビタス CIA「ビジネス現場におけるリスクマネジメントの必要性|実際の事例もご紹介」

経営リスク等のリスクマネジメントの実務に役立つ資格

企業を取り巻く経営リスクには多くの種類があります。それぞれのリスクを適切に評価し対応策を講じるためには、専門的な知識やスキルが欠かせません。

リスクマネジメントの実務に役立つ資格を3つ紹介します。

  • CIA(公認内部監査人)
  • CFE(公認不正検査士)
  • CRISC(公認情報システムリスク管理者)

詳しく見ていきましょう。

CIA(公認内部監査人)

CIA(公認内部監査人)は、内部監査の専門家としての知識とスキルを認定する国際的な資格です。内部監査とは、組織の業務プロセス、ガバナンス、リスクマネジメントの有効性を評価、改善する一連の取り組みを指します。

内部監査はリスクマネジメントの重要な一端を担います。内部統制の整備、運用状況を監査し、経営者に報告や提言を行うことで、組織のリスクマネジメントの実効性を高める役割を果たしています。

CIAは組織内のリスクを識別、評価する能力を持ち、リスクマネジメントの枠組みづくりや改善にも寄与します。

関連ページ:アビタス CIA「公認内部監査人(CIA)とは?取得するメリット、他資格比較」

まずは無料の説明会にご参加ください。

CFE(公認不正検査士)

CFE(公認不正検査士)は、不正調査の専門家としての知識とスキルを認定する国際的な資格です。

不正は、組織の財務的損失だけでなく、評判や信頼の低下、売り上げ減少などの重大なリスクをもたらします。

不正のシグナルを早期に発見、調査および分析する能力を持つCFEは、リスクの中でも特に不正リスクへの対応を中心に力を発揮します。不正が発生した際の原因究明にも大きな力を発揮するのも特徴です。

CFEは、不正防止を目的とした内部統制の設計と評価を行い、組織の脆弱性を指摘、改善することで、不正リスクをはじめとした様々なリスクを未然に防ぐ役割を果たします。

CRISC(公認情報システムリスク管理者)

CRISC(公認情報システムリスク管理者)は、情報システムのリスクマネジメントの専門家としての知識とスキルを認定する国際的な資格です。

情報システムは、多くの企業にとって活動基盤であると同時に、サイバー攻撃などの脅威にさらされるリスクとなります。

CRISCは、情報システムに関するリスクの識別と評価を行い、適切な対策を立案、実行します。

情報セキュリティを守ることは、情報漏えいなどのリスクを防ぐだけでなく、風評リスクや信用リスク、オペレーショナルリスクなど様々なリスクの未然防止につながります。

経営リスクは具体的に想定しておくことが重要

企業経営には多くのリスクがつきまといます。リスクの発生を抑え、万が一発生した場合に適切に対応して被害を最小限に食い止めるためには、リスクを具体的に想定しておくことが重要です。

また、リスクマネジメントに取り組むには専門的な知識やスキルが必要です。

社内にCIAなどの資格者を有することで、経営リスクへの実践的な取り組みが可能になります。リスクマネジメントの強化や信頼性向上の取り組みとして、資格取得は有効な手段の1つといえるでしょう。

CIA(公認内部監査人)の合格を目指すならアビタス

アビタスでは2005年にCIAプログラムを開講して以来、圧倒的な合格実績を挙げ続けています。合格率を上げるために、オリジナル教材と講師の質の良さにこだわっています。

講師は対法人向けの内部監査の実務研修も行っており、専門分野の知識だけでなく、ティーチングスキルにも優れているのが魅力です。

また通学・通信を併用できるコースや、スキマ時間で学習できるコンテンツなども揃えており、忙しい社会人でも効率よく学習できる環境が整っています。

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