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  • 2024/09/05公開

ESGリスクに対応した内部監査とは何か?現役CIAが解説

ESGリスクに対応した内部監査とは何か?現役CIAが解説

昨今、ESG活動を経営に織り交ぜたESG経営を実施している会社が増えています。こういった会社が増えることはとても素晴らしいことであり、ESG経営を実施していない会社との差別化にもなります。

しかし一方で、ESGにはさまざまなリスクがあります。ESGリスクから会社を守るためにも、内部監査人は、ESGリスクに対応した内部監査を行わなければなりません。

本記事では、ESGがどのような形で会社経営に組み込まれるか順を追って解説した上で、ESGにおける内部監査の役割について解説します。ESGリスクについて理解を深めたい方は、是非とも参考にしてください。

目次
そもそもESGリスクとは?
ESGはどのように企業経営に組み込まれるのか
ESGにおける内部監査の役割
健全で信頼性のあるESG報告を実現させよう

そもそもESGリスクとは?

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉です。そして、ESGリスクとは、事業体に影響を及ぼし得る環境、社会、およびガバナンスに関連するリスク及び機会を言います。ESGリスクは、サスティナビリティ、非財務リスク、または財務以外のリスクとも呼ばれることがありますが、ESG関連リスクの普遍的または合意された定義はない点が特徴です。

環境とは、主に気候変動、汚染、森林破壊などが該当します。社会とは、主に人的資本、製造物責任、職場の健康などが該当します。ガバナンスとは、コーポレートガバナンス、企業活動、トップの姿勢などが該当します。

ESGが注目されている要因として、様々な会社が事業を拡大したことにより、環境汚染や労働問題などの重大な問題が発生したことが関係します。

ESGに配慮した会社運営こそが、投資家が納得できる会社運営であり、企業の持続的成長(サステナビリティ)に繋がるため、ESGに関連する活動は会社全体で取り組まなければならない事項と言えます。

参照:全社的リスクマネジメント

ESGはどのように企業経営に組み込まれるのか

ESGに関連する内部監査業務を行うためには、まずESGが会社経営にどのように組み込まれ、どのような流れで投資家に開示されるのかを理解しなければなりません。

ESGで定義される「環境」「社会」「ガバナンス」というのは、全て広義なテーマでですので、細かく見ていくとその範囲は膨大になります。なので、ESGを会社経営に組み込む上では、いきなり全部やろうとせず、中長期的な視点で見て、自社にとって一番ボトルネックになっている課題や今後ボトルネックになる可能性がある課題などから取り組むべきです。

また、ESGについての自社情報を開示することは、投資家からの信頼を得ることに繋がります。以下より、ESGを会社経営に組み込み、その運用状況を投資家に開示するための4つのステップを解説します。

参照:ESG 情報開示実践ハンドブック

STEP1:ESG課題とESG投資

まず最初のステップは、ESG 課題と ESG 投資の現状を理解することです。

ESG開示の前提として、まず投資家が投資先の企業価値を考える際には、貸借対照表や損益計算書などの財務情報だけでなく、非財務情報も当然に考慮しますが、近年はそうした非財務情報の中でも、企業の持続可能性や中長期的な企業価値に与える影響の観点から、ESG に関する事項に注目が集まっており、上場会社の情報開示や投資家の投資判断においてもその重要度が高くなっています。

その上で考慮すべきなのが、ESG課題とESG投資となります。

ESG課題については、まず「環境」「社会」「ガバナンス」の枠で自社の課題となる要素を分析することです。実際には、一番重要度が高い課題から取り組むことが推奨されますが、この段階では、できるだけ多くの現在ESG課題になっているものや今後ESG課題になりうるものを見つけ、ピックアップしておくと良いでしょう。

ESG投資とは、投資判断の際に、従来から考慮されてきた財務情報に加えて、ESG 課題に関する企業の情報を考慮する投資を意味します。つまり、ESGについて取り組むことを放棄すると、投資家から投資される機会がなくなり、最悪の場合、会社の衰退に繋がります。このことから、今やESGは取り組んでも良い事項ではなく、取り組まなければならない事項であると言えます。

STEP2:企業の戦略とESG課題の関係

次のステップは、企業の戦略とESG課題の関係を明確にすることです。

ESG 課題は多様かつ広範なため、自社の活動に少しでも関係する ESG 課題をすべて網羅しようとすると膨大になってしまいます。なので、企業の持続可能性を高め、企業価値向上を目指すには、自社の戦略との関係が深い ESG 課題を特定し、それらに焦点を当てて取組みを進めることが重要となります。

また、投資家の観点から見ると、企業が中長期的な企業価値向上や事業の持続可能性の観点から重要と判断したESG 課題とそれらに対する取組みが、企業価値との関係を踏まえて説明されることは、その企業を中長期的な視点で評価する上で有用であるため、STEP2の段階というのは、ESG開示の中身に直結することが多いです。

ですが、自社にとって重要な ESG 課題を特定するというのは、確立された方法がございません。ここは難しいところですが、まずはESG 課題が自社のビジネスモデルや戦略にどのようなリスクや機会をもたらすのかを検討することから始めると良いでしょう。

STEP3:監督と執行

次のステップは、ESG課題に取り組む部門の監督と執行です。

ESG 課題への取組みを通じて、企業価値向上に繋げていくためには、ESG 課題に組織として取り組み、さらにその組織に適切なガバナンスの仕組みが存在し、それが機能していることが重要です。

投資家の視点で見ると、そうした情報が開示されることで、実際にその企業の持続可能性や企業価値向上に向けて実施されていることを把握できる要素になります。STEP3の段階というのは、STEP2で実行した企業の戦略が形骸化しないようにアプローチすることにあるため、ESG課題に関する責任の付与の状況や、経営者に対する社内での情報提供のプロセス、ESG 課題のモニタリングの方法等についての情報も開示できるようになり、投資家にとって有益です。

STEP4:情報開示とエンゲージメント

最後のステップは、投資家に対する情報開示とエンゲージメントです。

上場会社が ESG 課題に関するリスクや機会について、戦略、企業価値との関係や、それを支える監督と執行の仕組みや取組み状況を開示することは、投資家が中長期的な視点で企業価値を評価するうえで重要であると考えられます。

また、上場会社と投資家の間で、開示された情報等を基にエンゲージメントが行われることは、互いの理解を深めることにつながり、企業が中長期的な企業価値の向上に向けた取組みを進める上でも有用だと考えられます。

エンゲージメントは、「目的を持った対話」と言われることもあります。投資家は、エンゲージメントを通じて、ESGを含む企業の課題について、リスクと機会の観点からどのような対応・対策を講じているか等について理解を深めることができます。こうした内容は投資判断に活用され、その結果は年金基金等のアセットオーナーにも伝えられます。

企業にとってこうした対話は、自社の ESG課題に関する取組み内容やその背後にある考え方、企業価値との関係等について、投資家により深い理解を促す機会になると同時に、投資家の視点を知り、自社の取組みの改善につながる気付きや、成長、イノベーションのきっかけ等を得る機会になると考えられるので、積極的に活用されます。

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ESGにおける内部監査の役割

ESGを会社経営に組み込み、その運用状況を投資家に開示するための4つのステップについてご理解いただいたところで、実際に内部監査人がESG活動に対してどのように内部監査を行うかについて解説します。

ESGにおける内部監査を行う上では、ESGリスクによる影響を最小限にできるようにしなければなりません。そのための手法として、ESGに関連したアシュアランス業務とコンサルティング業務が必要となりますが、具体的には「報告の正確性と一貫性をアシュアランスすること」と「ESG環境を構築する部門に適切なコンサルティングを行うこと」です。

参照:ESG報告における内部監査の役割

報告の正確性と一貫性をアシュアランス

報告の正確性と一貫性をアシュアランスするためには、例えば、以下の3つの行動が該当します。

1つ目は、関連性、正確性、適時性、および一貫性に関する報告指標をレビューすることです。すべての公開サステナビリティ報告書は、組織体のESGへの取り組みを正確に表す情報を提供することが重要です。そのため、内部監査では、報告されるデータ(定量的および定性的)が正確で、関連性があり、完全で、適時であるかどうかについてアシュアランスするべきです。

2つ目は、正式な財務関示書類と整合性している報告書をレビューすることです。サステナビリティ報告は非財務データを提供しますが、仮に正式な財務情報開示と矛盾する情報が含まれている場合、規制当局や投資家に警戒を促すことになります。そういった情報を含むことが無いよう、アシュアランスするべきです。

3つ目は、ESG報告に関する重要性やリスクの評価を実施することです。ESG報告において、組織体は、何が重要かを理解して報告するのに苦労することがあるため、この領域は潜在的に問題になり得ます。組織体は、継続的なサステナビリティの取り組みや、サステナビリティの目標を達成するための公約が、重要性のレベルに達するのかを明確に理解しなければならないため、内部監査では、それらについて適切にアシュアランスする必要があります。

ESG環境を構築する部門に対するコンサルティング

ESG環境を構築する部門に対するコンサルティングを行う上では、例えば、以下の3つの行動が該当します。

1つ目は、ESG統制環境の構築段階におけるコンサルティングです。有能な内部監査機能は、効果的な統制環境の構成要素に精通しており、ESGリスクを管理して軽減するためのフレームワーク(COSOの内部統制の統合的フレームワークなど)が活用されていることが多いです。そのため、フレームワークについて助言することは有効と言えます。また、ESG報告に関する具体的な内部統制の整備についても必要であれば助言することが望ましいです。

2つ目は、報告指標を推奨するコンサルティングです。どのような事柄を報告するかは重要な問題ですので、コンサルティング業務の中で、組織体内のサステナビリティ関速の取り組みを正確に反映するような種類のデータ(定量的および定性的)については、洞察を提供すべきです。

3つ目は、ESGガバナンスについてのコンサルティングです。内部監査は組織体全体のリスクを包括的に理解しているため、ESGガバナンスに関するガイダンスを提供することができます。また、独自の視点を利用して役割と責任を明確にする手助けもできるため、内部統制に関する研修を行い、ESGガバナンスの向上に寄与することもできます。

健全で信頼性のあるESG報告を実現させよう

ESGリスクの定義は広く、業界によってさまざまです。故に、会社分析が重要となります。自社がどのようなESG経営を行っているか理解し、どのようなESGリスクがあるかを明確にしなければ、ESGリスクに関連した内部監査を行うことはできません。

また、会社が健全で信頼性のあるESG報告を実施できるようにするための最後の砦が内部監査です。その自覚と責任を持って、監査に取り組むようにしましょう。

本記事が、何か1つでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

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