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内部監査の重要な構成要素の1つとして、監査報告書があります。
監査報告書はただの報告書ではありません。監査報告書は、監査対象部門に対する一連の内部監査結果をまとめた報告書ですので、誤謬や脱漏があってはならないことはもちろん大切ですが、何より重要なのは、読み手となりうる取締役会・最高経営者・監査対象部門の責任者などに対し、読み手が誰であっても同じように解釈できるような分かりやすさを追求した上で、読み手にとって意義のある監査報告書にしなければなりません。
では、そのようなレベルの高い監査報告書は、どのように作成することができるのでしょうか。
本記事では、IPPFに準拠した監査報告書について振り返りながら、監査報告書作成の「準備編」「基本編」「応用編」に分けて解説します。
監査報告書については、公認内部監査人の試験範囲にも大きく関わってくる内容となりますので、公認内部監査人の学習をされている方の参考資料としてもご活用頂けるよう、なるべく具体的に分かりやすく解説させて頂きます。監査報告書について理解を深めたい方や公認内部監査人(CIA)の勉強をされている方などは、是非とも参考にしてください。
目次
監査報告書について
準備編:監査報告書を作成する前にやっておくべきこと
基本編:品質の高い監査報告書を作成するコツ
応用編:さらに深みのある監査報告書に仕上げるコツ
品質の高い監査報告書を作成できる内部監査人を目指そう
監査報告書は、内部監査の一連の実施した業務について、その概要と結果を報告するためのツールです。内部監査の専門職的実施の国際基準 2400番台「結果の伝達」によると「内部監査人は、内部監査(アシュアランスおよびコンサルティング)の個々の業務の結果を伝達しなければならない。」とありますが、そのためのツールが監査報告書ということです。
監査報告書の配布先は、最高経営者、取締役会、経営幹部、監査対象部門の経営管理者、是正措置の実施を行う者など、多岐にわたります。そのため、監査報告書を作成する際は、専門用語を使用することは避け、誰が読んでも同じように解釈することができるような、読み手にとって、読みやすくて分かりやすい意義のある監査報告書にしなければなりません。
監査報告書の書き方について解説する前に、監査報告書を作成する前の準備として、事前に以下のことを実施しておくことが望ましいです。これらは必ず行わなければならないわけというわけではありませんが、実施しておくことで監査報告書の品質を向上させることができます。
1点目は、「講評会の実施」です。講評会とは、内部監査が終了し、監査報告書を作成する前の段階で、監査対象部門の経営管理者、責任者、監査対象部門に関連する部門の責任者などに対し、内部監査結果のご説明や指摘対象となった問題点の相互確認、改善内容などについてディスカッションを行う会です。
講評会を実施することで、監査対象部門との意思疎通を図ることができますので、 より実効性の高い監査報告書の作成と迅速な改善行動を促し、内部監査効果と信頼性をより一層高めることができる点がメリットとなります。
2点目は、内部監査部門の監査人が使用する「共通の監査報告書フォーマットの作成」です。監査報告書は、正確、客観的、明瞭、建設的、完全かつ適時なものでなければなりません。もし、最終報告に重大な誤謬や脱漏が見つかった場合、内部監査部門長は、訂正した情報をその報告を受けたすべての関係者に伝達しなければならなくなります。そうならないために、監査報告書を一定の品質に保つ必要があります。
監査報告書を一定の品質に保つ上では、監査報告書のフォーマットを統一しておくべきです。もし、内部監査人毎にそれぞれ異なるフォーマットの監査報告書を使用してしまうと、読み手からすると統一感がなくなり、結果として、読み手にとって分かりにくい監査報告書となってしまいます。
また、最終報告に重大な誤謬や脱漏がないことを確認するためには、内部監査人が作成した監査報告書を関係者に提出する前に、内部監査部門長が一度必ず目を通し、重大な誤謬や脱漏がないか確認するべきです。
その際、内部監査人によって異なるフォーマットの監査報告書を使用してしまうと、内部監査部門長が重大な誤謬や脱漏に気付きづらくなってしまいます。そのため、共通の監査報告書のフォーマット自体がまだ存在しない場合、先に内部監査部門全体で共通の監査報告書フォーマットを作成しておくべきです。
一通りの準備が整ったら、いよいよ監査報告書を作成する段階に入ります。
基本的には、監査報告書に決まった様式やルールなどは存在しませんが、品質の高い監査報告書の作成を目指すなら、基準2400番台に準拠した監査報告書に仕上げるべきです。基準2400番台に記載されている内容を考慮すると、品質の高い監査報告書にするためには、少なくとも「目標」「範囲」「結果」は必ず記載しておくべきであることがわかります。
要するに一連の監査業務について、どのような監査目標を設定し、どこまでの範囲で、どこまでの監査を実施することができたのかについて記載するわけですが、「目標」「範囲」「結果」という言葉だけですと、抽象的であることから、言葉は同じでも解釈が異なってしまう可能性が生じます。そうなると、監査報告書を作成する監査人によって監査報告書の品質が著しく異なってしまい、内部監査部門として監査報告書を一定の品質に保つことができません。監査報告書を一定の品質に保つためには、内部監査部門内で「目標」「範囲」「結果」の定義を明確にする必要があります。
では、品質の高い監査報告書に記載すべき「目標」「範囲」「結果」はどのような内容であれば良いのかについて、以下より解説します。なお、今回ご紹介する定義はあくまで一例であり、監査報告書の言葉に対する解釈は会社によって異なりますので、その点はあらかじめご了承ください。
まず初めに、監査報告書に記載する「目標」です。「目標」は、内部監査を計画する段階で設定した目標を表し、目標に関する簡単な説明とその目標を選択した理由を記載します。
特にこの理由の記載が重要で、「なぜその目標となったのか」と「その目標を達成させることが会社にどのような価値を付加することができるのか」については必ず記載しておくべきです。
これらは内部監査の根幹とも言えますので、上記の記載が抜けてしまいますと、読み手からすれば、何のために内部監査を実施したのか不明瞭となってしまいます。
他にも、内部監査を計画する段階で設定した目標を細分化した小目標を設定した場合、それも合わせて監査報告書に記載するパターンもありますが、細かく記載することで監査報告書が読みにくくなってしまう可能性もありますので、小目標については省略されることが多いです。
次に、監査報告書に記載する「範囲」です。「範囲」は、実施した監査業務全体の範囲を表しますが、基本的には、「目標」で記載した内容に関する詳細な説明とイメージして頂ければ良いです。「範囲」に記載される内容は様々ですが、少なくとも、「実際に行った監査業務の内容」と「監査対象期間」は記載しておくべきです。
「実際に行った監査業務の内容」については、いわゆる監査手法に関する内容が該当します。例えば、どのような監査技法・監査手法を用いて、どこまでのサンプルを抽出し、どのような予備調査や実査を行ったのかなどです。ここは沢山記載することができる部分ですが、書きすぎて読みにくくなってしまうことがないよう、常に読み手を意識して、簡潔かつ明瞭な内容に仕上げることが大切です。
「監査対象期間」については、言葉の通り、監査対象として選んだ期間を記載します。その際、もし監査項目によって監査対象期間が異なっている場合は、項目によって分けて記載します。
他にも、監査業務の範囲をより明確にするため、監査対象としなかった業務についてをあえて記載したり、監査範囲の選定を裏付ける根拠の1つとして、内部監査部門の監査資源について簡潔に記載するなどの方法もあります。
最後は、監査報告書に記載する「結果」です。「結果」は、一連の内部監査の結果を表しますが、少なくとも「結論」「指摘事項」「改善提案」は記載しておくべきです。
「結論」では、「範囲」で記載した内容をもとに監査結果を簡潔に記載します。もし、監査を実施した部門に評点をつけている場合は、その点数も合わせて記載すると良いです。
「指摘事項」では、監査を実施する中で改善が必要だと判断した事項をまとめます。指摘事項は、読み手が特に関心を持って確認する項目ですので、結論を裏付けるような内容にしなければなりません。そのために、事実と指摘理由をしっかり分けて記載し、どの読み手でも同じ情景が思い浮かぶよう工夫しなければなりません。
「改善提案」では、指摘事項で記載した内容に対し、どのように改善するべきかについて記載します。改善提案については、必ずその裏付けとなる根拠を示すべきであり、実現が可能であるものにしなければなりません。
なお、改善提案はアドバイザリーの要素がありますので、監査人の知識・技能・経験などによって差が生じます。監査報告書を一定の品質に保つために、内部監査部門長は内部監査人が記載した改善提案の内容について、指摘事項に沿った改善提案になっているか。根拠に不十分なところはないかなどは事前に確認しておくべきです。
参照:実務指針 8.1 内部監査結果の報告および内部監査報告書
基本編で解説したことを一通り抑えておけば、読み手にとって読みやすくて意義のある監査報告書に仕上げることは可能です。ですが、工夫次第でより深みのある監査報告書に仕上げることも可能ですので、次はそういったコツについて解説させて頂きます。
深みのある監査報告書に仕上げるコツは様々ですが、今回は「目標」「範囲」「結果」に該当する内容ではないものの、監査報告書に記載することで、読み手により理解してもらいやすく、納得して頂けるような項目について解説します。 いわゆるプラスアルファになりうる項目です。大きく2点あります。
1つ目の項目は、「講評会に関する内容」です。講評会でディスカッションした内容の中で、監査報告書に記載した方が良いと判断できる内容について記載します。
例えば、指摘事項を踏まえた今後の監査対象部門の対応方針や指摘を繰り返さないための運用方法などです。こういった内容を記載することで、最高経営者や取締役会など、講評会に参加していないが指摘事項をどのように改善するのかについて興味を持つ読み手に対して、より意義のある監査報告書となります。
2つ目の項目は、「監査対象部門の見解」です。これは講評会に限った話ではありませんが、監査対象部門による内部監査の関心事についても、必要とあれば監査報告書に記載することがあります。
例えば、監査項目には入っていないものの、監査対象部門が今後リスクとなりうる可能性があると危惧している内容や監査に含まれていないが重大と言える法改正の影響などです。こういった監査対象部門の見解を監査報告書に記載しておくことで、次回の内部監査ではどのようなリスクベースの監査を行っていくのかについて興味を持たせることができます。こういった工夫についても、品質の高い監査報告書の特徴の1つです。
ここまで読んでみて、いかがでしたでしょうか。
品質の高い監査報告書を作成するためには、前提として、IPPFを適切に理解しておくことが必要となります。PPFを適切に理解している内部監査人というのは、公認内部監査人のような専門職資格を保持している内部監査人が圧倒的に多いです。
公認内部監査人は取得が難しい資格ですが、難しいだけあって、きちんと勉強して取得することができた監査人は、監査報告書の作成に限らず、様々な内部監査業務を高い品質でこなすことができます。能力の高い内部監査人が増えることは、監査業界全体で見れば、大変素晴らしいことです。
公認内部監査人は市場価値も高いですし、実務においても学んだ内容を自社の内部監査に組み込むといったことができるようになると、他の内部監査人との差別化になります。名刺にも記載することができますので、是非このタイミングで公認内部監査人の取得を目指し、プロフェッショナルとしての称号を得ましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
アビタスでは2005年にCIAプログラムを開講して以来、圧倒的な合格実績を挙げ続けています。合格率を上げるために、オリジナル教材と講師の質の良さにこだわっています。
講師は対法人向けの内部監査の実務研修も行っており、専門分野の知識だけでなく、ティーチングスキルにも優れているのが魅力です。
また通学・通信を併用できるコースや、スキマ時間で学習できるコンテンツなども揃えており、忙しい社会人でも効率よく学習できる環境が整っています。
CIAをはじめとする内部監査に関する資格取得を目指している方は、ぜひアビタスの利用を検討してみてください。
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