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就職活動や転職活動でFASという言葉を知った方は多いのではないでしょうか。FASは就職先・転職先として人気がある、年収が高いという話を聞いた方もいらっしゃるかと思いますが、そもそもFASとはどんな仕事をするのでしょうか。
本記事では、FASへの就職・転職に興味があるけれど「そもそもFASとは何なのか?実はよく分かっていない」という方向けに、FASの仕事と将来性、就職・転職にあたっての留意点について、FAS在籍経験のある現役コンサルタントが解説いたします。
目次
FASとは?
FASは将来有望なのか?
FASへの就職・転職にあたっての注意点は?
FASへの就職・転職を考えるならUSCPAは有効
まとめ
FASとはFinancial Advisory Serviceの略です。明確な定義はあるようでないのが実情ですが、「M&Aアドバイザリーの総称」と理解いただくのがよいと思います。M&Aは他企業(または事業の一部)の合併や買収を指しますが、逆に自社の不採算事業を切り離して他社に売却する場合もあり、それもサービスの提供対象となります。
FASの仕事として「事業再生」という言葉が出てくる場合もありますが、これも突き詰めればM&Aアドバイザリーとやることは同じです。そもそも事業再生とは、企業価値向上に繋がる事業とそうでない事業を仕分けしたうえで、前者はM&Aによるバリューアップ、後者は切り離し(カーブアウト)を行うものであると定義できるからです。
厳密には「M&Aアドバイザリー」の枠には入り切らない業務もありますが、そもそもFASとはどんな仕事なのかという概要を捉えるレベルであれば、上記の理解で概ね問題はありません。
M&Aアドバイザリーと一口に言っても、その仕事は多岐に渡ります。一般的にはPre-deal, In-deal, Post-dealの3つに分類することができ、それぞれ専門性が大きく異なります。
クライアント企業の財務分析等を行ったうえで、企業価値向上のためにM&Aが有効な戦略といえるか、どのようなリソースを保有する企業または事業のM&Aを行えばシナジーを発揮することができそうかの戦略策定を行います。M&Aの専門家という意味ではFASに分類されますが、業務内容は限りなく戦略コンサルタントに近いといえます。
Pre-dealの結果として「具体的にこの企業のM&Aを検討しよう」という方針が決まったら、具体的にその企業の価値はいくらなのか、その企業を買収した場合にどれだけのシナジーが生まれるのかを定量的に把握する必要があります。会計の高度な専門知識を求められるフェーズです。
M&Aが正式に決まったあと、実際に統合を進めるフェーズです。連結決算における勘定科目や連結パッケージなどを順次マッピング・統合していかなければなりません。中長期的にはERPなどの基幹システム統合なども検討対象となる場合があります。会計に限らず人事などの他コーポレート機能も統合対象となります。
一般的には会計事務所を母体とするBig4系のFASが有名です。具体的にはPwCアドバイザリー、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー、KPMG FAS、EYストラテジー・アンド・コンサルティングの4社です。
どのファームも世界中に強固なグローバルネットワークを有することから、海外企業の買収案件についても、買収先企業の所在地を本拠とするプロフェッショナルメンバーの協力を得ながらプロジェクトを進めていくことができるのが強みです。また、Pre-deal, In-deal, Post-dealの全部門を有するため、一気通貫でクライアント企業にサービス提供できます。
「Big4にはそれぞれコンサルティング部門もあるけれど、コンサルとFASは違うのだろうか?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
仕事の進め方は同じで、FASもコンサルも原則としてプロジェクトの形で仕事を進めていきます。異なるのは仕事内容で、M&Aに限らず様々な案件に関与する可能性のあるコンサルに対し、FASの仕事はM&Aという領域に範囲が限定され、その代わりに専門知識を駆使してM&A領域を深く掘り下げていくことになります。
この点は後述の「向き不向きが分かれやすい」という話に繋がってきますので、FASへの就職や転職を考えるうえでは必ず押さえるべきです。
ご自身の就職先・転職先の候補としてFASを検討する場合、FASの仕事の将来性が気になる方もいらっしゃると思います。結論から言えば将来有望であり、前向きに検討する価値があるといえるでしょう。具体的な理由は下記の通りです。
M&Aというと以前は身売りや乗っ取りといった悪いイメージがありましたが、昨今では「時間をカネで買う」ための主要な経営戦略の1つとして市民権を得つつあります。
少子高齢化に伴って日本のマーケット縮小は避けられない状況であり、日系企業にとって更なる成長のためには海外の成長市場を取り込むことが不可欠です。しかし、環境変化が激しい時代において新たに海外進出し一から自社で事業を立ち上げるのは時間がかかり過ぎる点において大きなリスクであり、M&Aが有効な戦略となり得ます。
このためM&Aの専門知識を有する人材へのニーズが高まっており、FASも人員増の傾向です。
一般論としてM&Aの現場に身を置いて実務に携わることができる機会は限られるため、M&Aの専門的な知識や業務経験を豊富に持っている人材は相当に限られます。FASでの実務を通じてこれらの知識や業務経験を手に入れることで他の人材と差別化を図ることができるため、将来的なキャリアの可能性が広がります。
M&Aのプロフェッショナルとしてキャリアを積んでいくこともできますし、大手事業会社の経営企画部やベンチャー企業のCFOやCOOなどを目指すことも視野に入ります。
FASの年収は、一般的に投資銀行よりは低いですがコンサルティングファームよりも高いです。そのためコンサルティングファームからのキャリアアップ転職も多い印象ですが、それ目当てでの安易な転職には注意すべきです。
仕事の性質上、向き不向きが明確に出やすいので、自己分析を入念に行い、興味を持って仕事に取り組めそうか、FASでの業務経験が将来のキャリアパスにどう繋がるのかを熟考することを推奨します。
M&Aアドバイザリーという言葉の通り、基本的にはM&Aに関する業務のみを行います。
上述の通り、M&AといってもPre-deal, In-deal, Post-dealでは求められる知識も業務内容も大きく異なり、M&Aしかやらないから仕事の幅が狭いということでは決してありません。しかし、M&Aという戦略そのものに興味・関心を持つことができなければ、日々の泥臭い業務に面白さを見出すのは難しいかもしれません。
プロジェクトによって求められる役割は異なりますので一概にはいえませんが、FAS在籍時の個人的な経験からいえば、スケジュール管理や論点整理などのPMO支援、クライアント側が知見の薄い領域における業務代行などが担当業務になりやすいとの認識です。
クライアントと一緒に1つの議題を掘り下げて時間を掛けて丁寧に議論していくというよりは、明確に役割を棲み分け、限られた期間で成果を挙げられるよう大量のToDoを迅速に捌いていくことが求められるイメージです。このような仕事のスタイルに共感できるか考えてみてください。
Pre-deal, In-deal, Post-dealのフェーズにかかわらず、クライアント企業の立場としては迅速に意思決定を行ったうえで新体制での経営を早期に軌道に乗せる必要があります。必然的に期限を細かく切って大量のタスクを確実に終わらせることを求められますので、業務量や業務スピードはとても速い傾向にあります。海外企業の買収案件などであれば、時差の関係で深夜にMTGがセットされることもあるでしょう。
これまで述べてきた通り、FASは専門性の高い仕事です。日本や米国の公認会計士資格を持っている方はその知識を存分に活かすことができますし、Big 4の中には会計士の有資格者を優遇採用しているファームもあります。ただしUSCPAで学ぶ内容だけでは十分とはいえないため、M&Aに特化した会計処理などに関しては入社後に追加でキャッチアップする必要があります。
前述の通り戦略コンサルタントに近い仕事になりますので、経営者目線でクライアント企業の分析を求められます。USCPAの包括的な会計知識は役に立つでしょう。
会計士としての専門性を最も発揮できる領域です。FASに在籍していた当時を思い返しても、日本の公認会計士やUSCPA有資格者が多かった印象です。
統合プロセスの全てが対象となりますので、カバーする業務範囲が広いことが特徴です。 USCPAでは財務会計、管理会計、IT、監査、税務などを幅広い分野を学ぶため、親和性が高いといえそうです。
本記事では、そもそもFASとはどんな仕事なのか、FASの仕事と将来性、就職・転職にあたっての留意点などを説明してきました。
M&A市場の拡大に伴い、FASは将来性も高く就職・転職市場でも人気が高まっていますが、ご自身の興味・関心や将来的に目指すキャリアパスにマッチしているかを確認した方がよいでしょう。
また、FASへの就職・転職を考えるならUSCPAの資格取得は有効で、企業側から高く評価してもらえる可能性が高いです。ただしFASの仕事は専門性が高い領域のため、入社後に更なる知識の習得は必須です。
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