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  • 2025/05/30公開
  • 2026/09/27更新

IFRS Certificate試験は独学で合格できる?勉強時間と4つの課題

IFRS Certificate試験は独学で合格できる?勉強時間と4つの課題

IFRS(国際会計基準)に関する知識を測る資格として注目される「IFRS Certificate試験」。経理・財務担当者を中心に受験者が増えている一方、「独学で合格を目指せるのか」という疑問を持つ人は少なくありません。本記事では、試験制度や合格率などの公開情報をもとに、独学の可能性と限界を整理していきます。

IFRS Certificate試験(旧IFRS検定)とは

IFRS Certificate試験は、1880年に設立された欧州最大規模の会計士協会であるICAEW(イングランド・ウェールズ勅許会計士協会)が運営する資格制度で、ロンドンに本拠地を置き、現在13万人もの会員を擁しています。試験はもともと英語のみで実施されていましたが、2009年12月より日本語での受験が可能になり、これは英語以外の言語での実施として世界初の試みでした。

試験制度の詳細は以下の通りです。

  • 試験形式:120分・60問の客観式(選択式)試験
  • 受験言語:日本語
  • 合格基準:正答率60%
  • 受験料:82,500円(税込)
  • 出題範囲:概念フレームワークおよびIAS・IFRS各基準書、40項目にわたる広範囲

受験資格に学歴や実務経験の制限はなく、経理・財務担当者だけでなく職種は幅広いのが特徴です。ただし範囲が広いため、試験時間2時間で60問という制約の中、IFRSについて包括的な理解が求められます。

合格率は「安定して高い」わけではない

まず押さえておきたいのが合格率の推移です。IFRS検定公式サイトの受験者データによれば、合格率は試験実施回によってばらつきがあり、高いときは80%に達する一方、過去には40%近くまで落ち込む回もありました。ただし、第47回にオンライン開催へ移行して以降は70〜80%台で推移しています。

直近の回別データ(IFRS検定公式サイト「受験結果・受験者データ」より)は以下の通りです。

実施回合格率合格者平均点
第50回(2023年11月)71.7%72.1点
第51回(2024年2月)68.4%74.7点
第52回(2024年6月)80.0%73.6点
第53回(2024年10月)70.7%72.2点
第54回(2025年2月)64.9%83点
第55回(2025年6月)80.4%90点
第56回(2025年10月)76.32%90点

注意したいのは、この合格率が受験者全体の数値であり、独学者とスクール利用者を区別した公式統計は公開されていない点です。つまり「独学だけの合格率」は、現時点で客観的な数値として測ることができません。

アビタス講座受講生とその他受験者の合格率差

公式統計としての「独学者限定」の合格率はないものの、アビタスが独自に集計したデータからは、講座受講生とそれ以外の受験者との間に明確な差があることが分かっています。第53回検定試験(2024年10月実施)における合格率を比較すると、次のような結果になりました(アビタス調べ)。

  • アビタスIFRS講座受講生の合格率:80.8%
  • その他受験者(アビタス講座受講生以外)の合格率:57.1%
  • その差:23.7ポイント

なお「その他受験者」には、独学で学習した人だけでなく、企業研修等でまとまった講義を受講した人も含まれるため、この数値がそのまま「独学者の合格率」を意味するわけではありません。ただし、体系立てられた講座を受講した層とそれ以外の層とで20ポイント以上の開きが生じている事実は、独学(あるいは非体系的な学習)が合格の難易度を押し上げている可能性を示す一つの材料といえるでしょう。この点も、本記事の結論と関わる重要なデータです。

必要な学習時間は決して短くない

学習時間の目安について、公式FAQおよびアビタスの情報では次のように示されています。

  • 簿記2級を持っている人で150〜200時間程度、およそ3ヶ月で合格レベルに到達可能
  • 会計の実務経験がない人の場合は300時間程度が目安とされる

比較対象として、BATIC(国際会計検定、2022年度で終了)の学習時間は簿記3級合格者で40〜60時間程度とされており、IFRS検定はこれよりも学習負荷が大きいと考えられます。また日商簿記2級と比較すると合格基準(正答率)はIFRS検定の方が低いものの、出題範囲がIFRS基準書全体という原則主義の体系であるため、単純な難易度比較はできません。

独学は「不可能」ではないが、壁は複数ある

独学で直面する4つの壁。教材選び、学習範囲、疑問の解消、実務との違い

結論から言えば、IFRS Certificate試験は制度上、受験資格に制限がなく、市販の会計基準解説書などを使えば独学での学習自体は可能です。実際に第三者メディアでも「IFRS検定は独学可能」という見解が示されていますし、実務経験者向けの解説記事でも「会計知識がある人なら市販の本や公式情報を使って独学することも可能」とされています。

しかし、同じ記事群の中でも独学の限界を指摘する声は一貫しています。

①教材選びの難しさ

教材選びでは出題範囲、教材の更新、問題と解説を確認

IFRS Certificate試験の独学が難しい理由の一つは、市販教材の網羅性の低さと、実務経験による知識の偏りにあります。試験範囲には、超インフレ経済下の会計処理(IAS29)や鉱物資源の探査・評価(IFRS6)、農業関連の会計処理(IAS41)といった、特定業種でなければ扱う機会の少ないマイナー論点も含まれます。しかし、一般的な市販の解説書は実務ニーズの高いメジャーな基準の解説に偏りがちで、自力で試験範囲を網羅することは容易ではありません。

さらに、経理の実務経験者であっても、日常業務で扱うのは自社のビジネスに関連する一部の基準に留まるのが通常です。試験が求めるのは、特定の業種や自社の取引に限定されない「全業種を前提とした体系的な知識」であり、自身の限られた実務経験と市販教材だけに頼っていると、どうしても学習の抜け漏れが生じてしまいます。

加えて、実務解説書と試験対策教材とでは扱う内容や演習問題の設計思想が異なるため、購入前に目次を試験範囲と照合し、出版時期や改訂版の有無まで確認する必要があるとされています。IFRSは基準の改訂が頻繁にあり、原則として基準書の最新版に基づき、発効日の翌年1月1日から出題範囲に加わる仕組みのため、手元の教材が最新の出題範囲をカバーしているかどうかを自分で見極め続けなければなりません。

市販されている教材の中には、本番形式の問題を繰り返し解いて解答解説を確認する「直前対策・問題演習」に特化したタイプのものも見られます。このような教材は、出題形式に慣れる、あるいは学習の総仕上げをするうえでは役立つ一方、そもそも基準の考え方を体系的に理解できていることが前提となっている場合が少なくありません。土台となる概念フレームワークの理解が不十分なまま問題演習だけを繰り返すと、正答のパターンを覚えるにとどまり、初見の論点や応用的な出題に対応できなくなるおそれがあります。

②体系立てて学ぶことの難しさ

第三者メディアの解説でも「会計初学者やIFRSを初めて学ぶ人が、学習範囲を整理しないまま独学で進めるとつまずきやすい」と指摘されています。IFRSは日本の会計基準とは考え方が異なる部分が多く、単なる知識の暗記だけでは対応できないケースが少なくないため、40項目に及ぶ基準書群を独力で体系的に整理する負担は決して小さくありません。

③疑問点を解消する手段の乏しさ

独学の注意点として「教材だけで理解できないときは、基準の原文や追加資料を調べる時間も必要になる」ことが挙げられています。質問できる講師がいない環境では、解釈に迷った論点をそのまま放置してしまうリスクがあります。

実際に独学で受験した経験者のブログ記録(2011年当時)でも、「お金があればアビタスに通って勉強するのが良いのだろうが、そんな余裕がなく独学で勉強した」という経緯が語られており、独学が「積極的な選択」というより「コストの制約による選択」として語られているケースがあることがうかがえます。

④実務経験者ほど陥りやすい「実務と基準のギャップ」

実務で培った会計知識は、IFRSの学習においても大きな強みです。ただし、日頃の会計処理には、自社の取引や方針を前提とした判断が含まれていることがあります。現場では効率が優先されるあまり、本来は区分して記載すべき費用をまとめて処理していたり、基準が求める手続きの一部が省略されていたりするケースも少なくありません。

こうした「慣れ親しんだ自社の処理」をそのまま試験問題に当てはめてしまうと、前提条件の違いから正答を逃すことがあります。独学では、この種の理解のギャップに自分だけでは気づきにくいことも、学習の難しさの一因です。確かな得点力につなげるには、「なぜその処理になるのか」を基準に立ち返って体系的に理解する姿勢が欠かせません。

これは、実務経験者ほど「自分は独学でいける」と考えがちな分、見落としやすい落とし穴だといえます。同様の構造は他の専門資格でも指摘されており、たとえば内部監査の国際資格であるCIA(Certified Internal Auditor)についても、実務での判断と試験が求める基準的な考え方との間にギャップがあるために独学が難しいとされる点は、IFRS Certificate試験の事情とも重なります。

試験不合格を経てアビタスで学び直した人の声

こうした独学の壁は、実際に一度独学で挑戦し、うまくいかなかった人の声にも表れています。アビタスの合格者インタビューでは、独学も試したものの、当時は教材や基準の解釈に不安を感じたことが、講座を選んだきっかけだったと語られています(この体験談はあくまで当時の個人の経験であり、現在の市販教材の充実度や独学全般を評価するものではない点には留意が必要です)。

こうしたエピソードと符合する形で、独学からスクールに切り替えた受講生からは、次のような声が聞かれます。

  • 試験範囲に適した教材一式がなかなか手に入らない
  • 40項目にわたる基準書を体系的に学習できない
  • 選択式・長文計算問題への試験対策がしにくい
  • 実務での処理をそのまま当てはめてしまい、基準が求める考え方とのズレに気づけなかった

これらは前述した「教材選びの難しさ」「体系立てて学ぶことの難しさ」「疑問解消の難しさ」「実務と基準のギャップ」という4つの構造的な壁と、内容として重なるものです。とりわけ最後のギャップは、会計・経理の実務経験が長い人ほど自覚しにくいという厄介さがあります。

まとめ:独学の合格率は測りかねるが、一般的には推奨しにくい

IFRS Certificate試験は受験資格が誰にでも開かれており、市販教材で学習を進めること自体は不可能ではありません。実際、簿記2級程度の会計知識がある人であれば、独学のスタートラインに立つことはできます。

しかし、

  • 独学者だけを対象にした公式統計はないが、アビタス独自の集計では、体系立てられた講座の受講生とそれ以外の受験者との間に第53回検定試験で23.7ポイントもの合格率差(80.8%対57.1%)が生じている
  • 一方で、試験範囲の広さ(40項目)や超インフレ・鉱物資源・農業といった特定業種のマイナー論点まで及ぶ出題範囲、基準改訂への追随の必要性、IFRS特有の原則主義的な考え方への対応など、独学者が自力で解決しなければならない課題は複数存在する
  • 実際に独学から講座利用へ切り替えた人からは、「適した教材一式が手に入らない」「体系的に学習できない」「試験対策がしにくい」といった声が聞かれる
  • 特に実務経験者は、自社の処理や判断をそのまま基準に当てはめてしまい、前提条件の違いに気づけないという「実務と基準のギャップ」に陥りやすい

という事実を踏まえると、IFRS Certificate試験は、一般的には独学よりも体系立てられた講座での学習が推奨されるタイプの資格だと言えるでしょう。特に、限られた学習時間の中で確実に合格を目指したい人や、実務にも活かせる形でIFRSを理解したい人にとっては、教材の整備や質問対応、最新の出題範囲への対応まで含めて学べる環境を選ぶことが、遠回りを避ける近道になります。

主な参照元

アビタスIFRS講座受講生とその他受験者の合格率比較(第53回検定試験):アビタス独自集計

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